『ルイージに歴史あり』その32

4月21日


第二部(ルイージ 起死回生、そして決意)

第二章:『ミスターLの叫び』

(4)〔ミスターLとルイージ 後編〕

「どうやら、じっくり時間をかけて、お前にお前の、
いや俺の本心を理解してもらおうと思ったが、そんな悠長な事は
言ってはおれぬかもしれない・・・」
ミスターLの目が光る。

(コイツ・・・やる気か!?)
ルイージが身構える。

「勘違いするな。 今の俺自身は牙が折れ砕けた状態で、
これ以上闘うことはできないし、そもそも自分自身に攻撃しようとは思わん。
それはともかく、他にお前の聞きたいことはないか?」
ミスターLはルイージをみた。

「・・・もはや聞くことはないよ。 あとはお前を倒し僕の体を取り返すだけだ
いっておくが、今のお前の話や、あの時のエクレア姫の話等で
お前が僕だなんてことは信じないからな!
そもそも僕はマリオ兄さんを尊敬しているのだ! 
尊敬している相手を倒そうなんて思うわけがないだろう!! 」
ルイージは何かを振り払うかの様に首をよこにふり、きっぱりと言った。

「・・・・そうか」
ミスターLはボソッとつぶやく様にいい、沈黙した。

ルイージとミスターLの間に沈黙の時間が流れはじめた。

どれぐらいの時間が経ったかは具体的にはわからないが、
かなりの沈黙の時間が流れた様にルイージは感じられた。

「オ、オイ!? 長いよ!! 
どんだけ、何もしないでただ黙っているだけなんだよ!」
沈黙に耐えられなくなったルイージはいった。
そして、続けざまに『黙ってないで何か言えよ』と言おうとしたが、
ミスターLの顔をみたルイージがハッとした。

ミスターLのメカっぽい目から涙が流れていたのである。

(な、な、涙!?)

「ルイージよ・・・」
ミスターLは悲しみに満ちた声で言った。

「お前は何故いつも自分の本心をみない・・・」
ミスターLは言った。 その声は本当に悲しみ満ちていた。

「な、何を!?」
相手の思いがけない涙と悲しみにルイージは戸惑う。

「何故いつもお前は自分の本心をみない!!
何故いつもお前は、わけわからぬ強迫じみた大義名分で、
自分の本心にふたをしやがるんだ!! みろよ!!! この世界の景色を!!
この世界の記憶を!!! お前の本心を!!!」
ミスターLは悲しみと怒り、そして気迫に満ちた声でルイージに言った。

思いがけない気迫に思わず押されたルイージは
ミスターLと自分がいる世界をみた。

今までミスターLという存在に意識が集中しすぎて全く気付かなかった・・・

自分がいる世界のとてつもない暗さ、それに伴うとてつもない歪みに、
胃から何もかも吐いてしまう様な気分になった。

そして、暗く歪んだ世界に浮かぶ数々のイメージ、

いや、イメージなどではなかった。
それはマリオブラザーズのルイージとして
歴史の舞台に立ってから約24年間、
マリオファミリーの日陰に立たされたたがゆえの苦い、
いや苦痛の自分の数々の記憶だった。

その数々の記憶達から悲しみと苦しみのシグナルが一斉にルイージに向けて
発せられた。

「ぬああああー!!」
数々の悲しみと苦しみのシグナルが一斉にルイージの中に入り込んできた。
ルイージは思わず苦悶の声をあげる。

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ルイージの中で何十、何百、いや何千ものシグナルが幾重にも反響した!

「ぬがあぁぁぁー!!! あ、頭が、か、体があぁぁー!!」
その反響にルイージは頭をかかえ、倒れ、転げまわった

『・・・は・・・ではない』
『ど・・・て、お・・・む・・・ない・・・』
『な・・・やつ・・・う・・・』

何千ものシグナルが、次第に聞き覚えのある声に変わっていく。

『僕は、マリオではない』
いや、聞き覚えがあるも何も、その声は自分の声だったのだ。

『僕は緑のオッサンではない!』
『どうして、僕だけが報われず、何の地位もない!!』
『何で奴、マリオだけが幸運の女神の溺愛をうける!!』
怒りと悲しみの混じった何千もの自分の声がルイージの中で反響する

『僕はマリオじゃない、誰もそのことを本当に理解しない!
そんな奴等に、お荷物だの、ヒーローの足を引っ張る奴だのと、
いわれたくないよ!!』
色々な自分の声の中で、とても強烈な一撃の様な声が
ルイージの中で響いた。

「ぬおおっ!! や、や、や、やめろー!! 
こ、こ、こ、これらは、僕の声じゃない!! や、ややや、やめ!??」
自分の中に響く声に抗うように転げまわり、
そして、もがきながら立ち上がるルイージはふと、自分の体をみた

「ううっ!? こ、こここ、これはあぁ!?」
ルイージの体のいたるところに、
ルイージの中で響いている言葉が文字としてうかびあがっていたのだ。

しかも、それぞれの言葉の上に、まるでその言葉を封じるかの様な
傷の様なものも、ルイージの体のいたるところにうかびあがっていたのだ。

己のからだにうかびあがるものに仰天しつつ、
そのうえ、ルイージは自分が涙を流していることを
感じ取っていった。

「な、涙!? こ、この涙は・・・!?」
ルイージは未だ自分の中で起こっている反響を苦しみつつ、
ミスターLの、いや、ミスターLの流している涙をみた

「お、同じ涙だ、コ、コイツと僕の流す涙は全く同じだ・・・」

ルイージは自分のつぶやきにハッっとした。

「そうだ、同じだ!」
ルイージは確信した。

「お前の言う通り、お前は僕だ! 僕はミスターLでもあるのだ!
そして、お前、ミスターLは僕の本心だ!」
理屈ではなかった、詳しい理由もわからなかったが、
ルイージは直感的に確信し理解した。

「だが!!」
ルイージは自分の体をみた。

ルイージの体に浮かび上がる言葉の中に傷の様なものがついていない
言葉がひとつあった。

その言葉は
“あの女、許せん!! 僕の苦しみと存在を否定しやがって!!”とあった。

「また、封じないと!!」
何千とある自分の反響に苦しみながらも、
ルイージは、その言葉にパンチをいれようとした。

「やめろぉぉー!!! これ以上、己の感情を、本心を封じるな!!」
ミスターLは叫んだ

ルイージのパンチが言葉の途中でとまり、ミスターLの顔をみた。

「そうだ、お前の言うとおり、この体にうかぶ何千の言葉は僕自身の言葉だ。
そして、僕の中で反響している何千の声も僕自身の声だ。」
ルイージは大粒の涙をたくさんこぼした。

「そうだ。 マリオブラザーズとして歴史の舞台に立って約24年・・・」
ルイージは普通に立ちながら、涙を、鼻水を流し続ける。

先ほどまで自分を苦しめていた反響は嘘の様にルイージの中から
消え去っていた。

「僕は、マリオ兄さんについて、色々な敵と戦い、
色々な行事に参加してきた、そして、マリオブラザーズには、
姫君様、ピノキオ、クッパ、そしてデイジー姫等、色々な仲間が加わり、
一つの大きなファミリーができた、だが、」

ルイージは暗く歪んだ世界に浮かぶ苦痛の自分の数々の記憶をみた。

「この約24年間の歴史は、マリオ兄さんには栄光しかない歴史だろうが、
僕には苦渋しかない歴史だった・・・」


「そうだ、お前の歴史は、いや俺達の歴史は、苦渋しかない歴史だったな・・・」
ミスターLはルイージと同じぐらいの大粒の涙をたくさんこぼした。

「そうだよ、お前の言う通りだ、僕は、マリオ兄さんについて、
色々な敵と戦い、マリオパーティ等、色々な行事に参加してきた・・・
正に、己の身を粉にしてきたのに・・・・」
ルイージの視線はあらためて暗く歪んだ世界に浮かぶ
苦痛の自分の数々の記憶に注がれた。

「世間は、僕のそんな頑張りと俺の存在をまるっきり理解せず、
“マリオの足をひっぱらないで”とか
“臆病で地味のくせに自分の冒険を美化している”等と言われ・・・」

「ファミリーも僕のそんな頑張りと僕の存在をまるっきり理解せず・・・
あげくの果てには“マリオの横にいる緑のオッサン誰だっけ?”と言われ・・・」

「そして、僕の尊敬する人間も・・・」
ルイージはこみあげる悲しみと悔しさに歯をくいしばる。

「・・・僕が好きで・・・
僕の事をそれなりに理解してくれると信じていた女性も・・・」
ルイージは、また大粒の涙をこぼした。

「僕の頑張りはおろか、僕の存在すらも否定されてしまった・・・」
ルイージはうつむいた。

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「苦渋しかないのさ・・・ 僕の歴史は・・・ 
その事に対し、僕が好きな女性やファミリーに癒してくれ、助けてくれと
言ってはだめか・・・ 僕の苦渋は甘ったれているだの、努力してないだの一言で
片付けられるのか・・・ そうさ・・・
その事に周囲に対して癒してくれ、助けてくれと言っても、無駄だと
悟った僕には、己の中でこれらの自分の叫びを封じ、
ファミリーの一部として、唯々諾々と動くだけしかなかったのだ・・・」
ルイージは自分の肉体にうかぶ言葉をみつめた。

-(5)〔鋼鉄の兄弟 参上〕へ続く-

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