『ルイージに歴史あり』その52

6月6日

第三部(マリオファミリーとノワール伯爵一味の内情)


第1章 『俺は唾棄される愚者でしかないのか!?』


(1)みわくの道化師 登場


雨足の勢いは徐々に弱まりつつあるが、
雨が降り、水嵩も、未だ徐々にだが増している濁流に、

ルイージを逃がした直後、
力尽きて完全に機能が停止したPアドバンスがうかんでいた。

そこらの乗用車の十数倍の重量のあるPアドバンスといえども、
この濁流には、流されてしまうのかと思いきや、
機体の一部が、濁流の水嵩より高い岩にひっかかることで、
濁流に、うかんでいる様なかたちとなっていた。

Pアドバンスのパイロットであるストレンジャー3号は、
エルガンダーZの吸引から、機体の冷却エネルギーをばらまくという奇策で、
何とか、エルガンダーZの体内より脱出こそはできたものの、

エルガンダーZの憎悪と怨念の毒気に、意志をなくし、
完全に虫の息だった。

そんな機体とパイロットに向かい合う様なかたちで、
ミスターLの駆るエルガンダーZがある。
(エルガンダーZは、一定の高度を保ちながら
ブースターをふかしながらホバリングしている様な状態なので、
正確には、Pアドバンスからみれば、見上げる様なかたちといった方が
正しいのかもしれないが)

エルガンダーZが、Pアドバンスに向かい合ったのではなかった。

エルガンダーZは、ストレンジャー3号の奇策で、
機体の関節部等が凍りつき、まともに動けず、
ホバリングするのが、やっとの状態だった。

偶然にもPアドバンスが、エルガンダーZの正面へ落下した結果、
2つの機体は、向かい合う様な形になっただけであった。

ミスターLは、時間にすると、ほんのわずか数秒、呆然としていた。

ストレンジャー3号に、いわれた通り、
ミスターLは、ルイージから派生したものであるので、
ルイージの肉体に宿らなければ、いずれは消滅してしまうのである。

ストレンジャー3号との闘いの中、別にルイージの肉体に宿らなくても、
ミスターLは、コントンのラブパワーで、
世界の創造主たる自分に相応しい肉体を手に入れればよいと言った。

しかし、その言葉は、ハッタリだった。
なぜなら、
そのコントンのラブパワーは、ノワール伯爵の管理下におかれていた。
伯爵ズの一人とはいえ、新参者の外様であるミスターLが
容易にふれられるものなどではなかった。

しかも、(ミスターLの知る得る限りだが、)
ノワール伯爵とナスタシアの性格を考えれば、彼等が、自分の望みなど
絶対にきいてくれる保証などなかった。

単純に、ストレンジャー3号を、ひるませ、
1秒でも早く倒したい為の言葉だったが、
結局はルイージにまんまと逃げられた。

治療マシーンの飛行スピードを考えてみると、
ルイージを探し出すのが、とても難しいのは、
憎悪と怨念と勢いだけのミスターLでも、
容易に想像できた。

ルイージを探し出している間に、
自分が消滅してしまう可能性だって十分に
あり得ることも、ミスターLでも容易に想像できた。


マリオやストレンジャー3号への憎悪で忘れていた
自分の消滅の可能性という懸念が、
漠然とした懸念事項でもあるにせよ、
ミスターLを、ほんの数秒間、呆然させていた。

そんなミスターLの視界に、
真正面にうかぶPアドバンスのパイロットである
ストレンジャー3号の顔があった。

かろうじて、生きてはいるものの、
もはや、風前の灯火も同然のストレンジャー3号だった。

しかし、その顔には、弱々しいが、はっきりと笑みがうかんでいた。

画像



その笑みは、実際に何かをやりとげて、
後悔もなく満ち足りた気分になった者が
もつことができる笑顔だった。

その笑みがミスターLを呆然から引き戻し、憎悪をたぎらせる。

「お、おのれぇぇー!! たかが、マリオに勝ったこともない
2枚目気取りのボケナスの負け犬野郎の分際で、
てこずらせやがってぇぇ!!
そのうえ、何だ、その笑みはよぉぉー!!」

ルイージの精神の中より生まれ出た時より、
ミスターLが知る得る笑みとは、嘲笑と冷笑しかない。
それ以外の笑みをミスターLは認識できない。

だから、別に、ストレンジャー3号が、
ミスターLにむけた笑みではないにも関わらず、
ミスターLには、その笑みは、
自分をバカにしている笑みにしかみえなかった。

そのことが、ミスターLの憎悪をより一層、たぎらせた。

「てめぇみたいな負け犬野郎で、チンケな悪党しかできなかった奴は、
道端の石ころの如く、
俺の様なダークヒーローの邪魔にならない様に、隅にいればいいものを
身の程をわきまえねぇような邪魔しやがってぇぇぇぇぇぇ!!」

エルガンダーZのレーザー光線の照準を
Pアドバンスのコクピットに定める。

「跡形もなく、消え去りやが…」

突然、警告メッセージがエルガンダーZのコクピット内に流れる。

『機体の動力部及びメインコンピューターが間もなく凍結、
パイロットは、速やかに…』

警告メッセージが途中で止まる。
エルガンダーZの照準機能が、ブースターが凍結により停止する。

Pアドバンスの冷却エネルギーにより、
ミスターLは、エルガンダーZの機能が完全停止した事を理解した。

(エルガンダーZの高度が下がる!?
まだ機体の凍結がすすんでいる! このまま濁流の中に
落下すれば、あの負け犬野郎のあけた穴から、水がはいる!
そうなれば、エルガンダーZもろとも俺すらも、ほんの数秒で凍結しちまう!?)

ミスターLの心が激しい憎悪から激しい恐怖に一変する。

「ヒエェェェェェー!!」
一気に機体が濁流へ落下することに、ミスターLは、悲鳴をあげる。

エルガンダーZは、濁流の中へと落下し、ミスターLもろとも
凍結はしなかった。


なぜなら、文字通り、景色が濁流から、
異次元空間に変化していたからである。

「こ、これはどうなっている!? 景色が、景色がぁ!?」
突然の景色の変化に、ミスターLは、ただただ愕然としていた。

「ふふふ、新米とはいえ、ザ・伯爵ズのメンバーたる者が、
そんなに、うろたえちゃダメじゃないか」

(こ、この声は!?)
聞き覚えのある声が聞こえた。

「ボンジュール、ミスターL」
聞き覚えのある声がミスターLのすぐ近くで聞こえる。

「なっ!? テ、テメェは、ディメーン!」
ミスターLは、また愕然とした。

エルガンダーZのコクピットにいるミスターLと対峙する様なかたちで、
ミスターLの同僚であるディメーンが空中に浮遊していた。


画像



ディメーン、ザ・伯爵ズの一人であり、
みわくの道化師の通称どおり、
まるで道化師の様な出で立ちをしている。

また、ディメーンの名前通り、
ディメンジョン(次元)を利用した闘い方を得意とする。

「ボクはずっと、この空間から、キミの闘いを見物させてもらったけど、
まるで、喜劇でもみているようで、なかなか滑稽で味のある闘いだったよ」
ディメーンは、柔和かつ楽しそうな口調でしゃべる。

「ずっとだと? じゃあ、俺とマリオやストレンジャー達との闘いを
一部始終、ノワール伯爵の命令でみていたのか? 」

「ふふふ、ノワール伯爵の命令じゃない、ボクの意志さ。
キミは、一応、ボク達の同僚であり、
黒のヨゲン書によると、
ルイージはノワール伯爵の計画を実行する為の
重要な人物だからね。 この様な事態にそなえて、
ボクが見守らせていただいたというわけさ」
ディメーンは、柔和だが、どこか抑揚のない口調でしゃべる。

(何とか、助かることは助かったが、助けてくれた相手がコイツではなぁ…)
ミスターLは、思わずにはいられなかった。

ミスターLにとって、
ディメーンは、他のザ・伯爵ズの3人とは違い、
性格に関していえば、とらえどころというものが、まるでない。

他のザ・伯爵ズの3人は、あのノワール伯爵の野望の為に、
彼等なりに、忠誠を誓って行動しているのは、わかるが、
このディメーンに関しては、何を考えて行動するのか、
ミスターLには全く読めない。

また、ディメーンの行動には、
ノワール伯爵への忠誠心が感じられず、
何らかの意図が隠れている様な気がしてならないが、
ミスターLには、その意図が、ほとんど読み取ることができなかった

だからこそ、ディメーンに助けられても、ミスターLには、
あまり安堵の気持ちがわかなかった。


「ところでさ 全く話が変わるけど、ミスターL
君に確認しておきたいことがあるのだけど、いいかな?」

ミスターLの内心を知っているのか知らないのか
相変わらず、ディメーンの口調は柔和だが、抑揚がない。

「確認しておきたいこと? 何だよ?」
相手が相手だけに、思わずミスターLは警戒する。

「キミは、どうやらミスターLという個人であり、
その名前は、キミ自身が手に入れた本名だけど、
キミは、ルイージであってルイージではない。 
さらに、今のキミの姿から察するに、
キミは、ルイージの精神の深層にいた、
ルイージの別人格みたいなものなのだろう?」

「!? なっ!? テ、テメェ、ど、ど、どうして…!?」
全くの予想外の相手から、自分の実体を言い当てられたことに、
ミスターLは、びっくり仰天する。

「ま、まさか、ノワール伯爵やナスタシアは、最初から俺の実体を
知っていたのか!?」

「さあね、ノワール伯爵はキミの実体に対して
確信はなくても、疑念みたいなものを
もっていたかもしれないが、
少なくともナスタシアは全く気付いていないと思うよ。

ただ、ボクがみたところ、ナスタシアの催眠術のかかり具合が、
他の者達と、どうも何か決定的に違うと思っていたからね、

そこで、ボクはこの次元からキミと、あのストレンジャー3号の会話を
聞いてみれば、キミはルイージから派生したというそうじゃないか。
彼女の、ご自慢のチョーサイミンジュツも、
一度に2つの精神には効かないとみえるね」

「テ、テメェ、だったら、どうする気だ!?」
ミスターLは、身構える。

「ボク自身は、今のところ、どうもしないさ 
ただ、ボクは、キミをノワール伯爵のところへ丁重につれていき、
この詳細をノワール伯爵に報告するだけさ。
その報告を聞いてキミへの処置はノワール伯爵が決めるよ。
だから、わかっていると思うが、あまり意味のない行動はやめてくれ。」
柔和だが、はっきりとディメーンがいった。

正直、自分の素性が、ノワール伯爵一味にばれた様な状況であり、
ミスターL自身がルイージの肉体から抜け出して精神エネルギーのみの状態である。

しかも、頼りとなる鋼鉄の兄弟であるエルガンダーZは完全凍結していた。

正直、自分の素性がばれてしまった以上、
ノワール伯爵の下には戻りたくなかったが、
そんな状態にいるミスターLには、
何の打開策は思いつかなかった。

「…わかった、ディメーンよ ノワール伯爵のところへ連れていってくれ」


「かしこまりました。 それでは、ミスターL、
ノワール伯爵の下へ、ご案内いたします」
みわくの道化師ことディメーンは、笑みをうかべつつ、
仰々しく言った。

(くそっ! コイツも俺をバカにしやがって…
あの負け犬野郎も、コイツもいつか、
この俺を笑ったことを必ず後悔させてやるぜ!)

ディメーンの動作をみて、憎悪と怨念をたぎらせるミスターLだった。

-(2)『戦力外通告』へと続く-

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