『ドラえもん 友情伝説 ザ・ドラえもんズ 番外編』 その2

8月14日

(2)王ドラとドラメッドⅢ世の友情(後編)

通信機能付きのテレビには、おそらく
何らかのスポーツのチーム名とロゴマークのはいったジャージを着た
いかにも、どこかのチームの監督を思わせる様な雰囲気をまとった
白髪のまじりの黒髪の中年の男性が映し出された。

「キャッサーバ監督、夜遅くすいませんアル」

「時差の関係で、こちらは、そろそろ昼になろうとしている時間帯だから 
気にすることはないよ」
キャッサーバは、明るく言ったが、ドラメッドⅢ世には、
その表情は、どこか疲れて沈んでいるように、感じられた。

「キャッサーバ監督、こちらは、ドラメッドⅢ世とラオチュウ老師」

王ドラに紹介され、ドラメッドⅢ世とラオチュウは、会釈した。

「老師、ドラメッドⅢ世、こちらは、キャッサーバ監督
ドラリーニョと同じリーグのサッカーチームの監督アル」

王ドラに紹介され、キャッサーバも、軽く会釈した。

「ドラリーニョと同じリーグということは、やはり、
ドラリーニョのせいで、色々迷惑を被っているようですね」
ドラメッドⅢ世は、相手の沈鬱な表情をみて、申し訳なさそうに言った。

「迷惑なんてものじゃないアル、 監督、彼等に現在の状況を
説明してくれませんアルか?」

キャッサーバは、うなずいた。
ドラメッドⅢ世には、
キャッサーバの沈鬱さが、より深くなった様にみえた。


「このイージーホールのブラジルにおいて、
サッカーとは、誇り高き国技であり、
フェアプレーとチームワークを重んじる紳士達のスポーツなのです。 
だが、あのドラリーニョは!!」
キャッサーバの眉間のしわが、より一層深くなる。

「奴は、まるで、サッカーを自分の自己顕示欲のはけ口にでも
しているが如く、チームワークとチームメイトを、まるっきり省みない
自分の為にしかならない様なスタンドプレーしかしない! 
攻撃も防御もサッカーチームとしてではない! 
奴が、ストライカー、あるいはリベロとして目立ちたいだけのプレーしかしてない!」
キャッサーバは、まさに憤懣やるかたない表情で語気も荒くなっていた。

「そんな奴の行動を、この私を含め、
サッカーに真摯につきあってきた筈の監督や選手達が
全く対抗すらできない! 奴の行動の結果、
リーグ内の優秀な選手たちが、プライドをヘシ折られて
次々と辞めていったよ!」

話している内に、悔しさが、一気によみがえり、
ふきでたのだろう
キャッサーバは、涙を流して、拳をふるわせていた。

この様子からでも、悪のチップを埋め込まれていたとはいえ、
親友の行動が、周囲の人間に、どれだけ迷惑をかけているのか
十二分にドラメッドⅢ世には、想像できた。

とりあえず、3人は、キャッサーバの憤懣が
おさまるのを待った。 3人は、下手に声をかけるよりも、
待った方がいいと思ったからである。

「ああ、すまないね ついつい、我を忘れて取り乱してしまって…」
キャッサーバは、ハンカチで自分の顔を拭いた。

「王ドラ、これは悠長に構えてはいられないのだろう
ドラリーニョの居場所をつきとめているのだ。
早速、ドラリーニョ本人との闘いに
でかけたほうがいいのではないか」
ドラメッドⅢ世が立ち上がる。

だが、王ドラは、立ち上がらない。

「どうした? 王ドラ」

「ドラメッドⅢ世、お前の言う通り、王ドラ達が、
ドラリーニョ当人のところへ直接対決して、悪のチップを取り除くことが
一番手っ取り早いアル でも、さっき言った様に、
ドラリーニョの居場所はわかっているが、
奴に近づくのは、想像以上に難しいアル」
王ドラは、難しい顔をする。

「ドラメッドⅢ世、実はイージーホールのブラジルのサッカーは
サポーターやファンが多い。 だが、そのサポーターやファンには
敵対チームが気に入らないから、モノをぶつける、
審判のジャッジが気に入らないから発砲する等、
過剰なマネばかりする輩も多い。 

そんな輩から試合そのものを
守るためにも、我々のリーグに属する選手には、
四六時中、護衛がついている。 
それは、ドラリーニョとて例外ではない。」
キャッサーバは、王ドラ以上に難しい顔する

「しかも、ドラリーニョの場合、
どこで雇ったのかは知らないが、
いつも数人の護衛が、ついている。 
しかも、一人一人が恐ろしく強いのだ。」


「つまり、迂闊にドラリーニョに近づき、
その護衛をかいくぐるのを、手間取ってしまっている間に、
ドラリーニョに逃げられ、
ドラリーニョに、そのまま潜伏でもされてしまったら、
事態を収拾するのが、遠のくアル」
王ドラは腕を組んだ。

「成程、一刻も早く事態を収拾せねばならないのなら、
護衛達に邪魔されずに、確実にドラリーニョに近づき、
悪のチップを取り除く必要はある。 
だが、どうすればいいのかだな」
ドラメッドⅢ世も、腕を組む。

「一つだけあるぞ 
護衛達に邪魔をされずに、確実にドラリーニョに方法が」
難しい顔をする3人が、一斉にラオチュウをみる。

「本当ですか! ラオチュウさん」

「それは、お前たちが、
ドラリーニョに、サッカーの試合を申し込むことじゃ」

「なるほど、サッカーの試合なら、護衛には邪魔されずに
ドラリーニョに、確実に近づけるアル!」

「そういうことじゃ だが、この方法を行うには、
監督さんに頼まねばならぬことがある。 監督さん
貴方の国のサッカーを運営しているサッカー協会でしたかな
その協会に、試合を、マスコミ等には、一切もらさず、
試合会場には、選手と監督及び審判以外は、
必ずシャットアウトしてもらうことと、
サッカーは11人で行うスポーツだから、
この2人に、あなたのチームの選手達が協力してもらえる様に
頼めますかな」

「試合の設定に関しては、私から協会に頼めば、
特に問題なくおこなうことができます。 しかし、
選手達については、到底、希望に応えることができません…」

キャッサーバは、沈んだ表情となる。

「先程、申し上げた様に、ドラリーニョのせいで、
リーグ内の優秀な選手たちが、次々と辞めていきました…
その中には、私のチームの選手も含まれています…
他のチームを含め、まだ辞めていない選手達は、
いるにはいますが、ドラリーニョとサッカーで
闘おうなどという気概すらない状況です。」
キャッサーバは、涙をながす。

「そんなに、ひどい状況なのか!? 
人数が足りなければ、サッカーはできぬ…
せっかくの名案だと思ったのになぁ…」
ラオチュウが道場の天井をみる

「いや、選手ならいますアル」
王ドラが、きっぱりと言った。

「王ドラ、本当か!? お前、
サッカー選手の知り合いが、いるのか!?」
ドラメッドⅢ世が、思わず訊ねる。

「王ドラには、サッカー選手の知り合いはいないが、
カンフーの使い手の知り合いならいるアル
老師、急な頼みで、申し訳ありませんが、
老師の弟子達に、サッカーの試合に、でていもらう様に
していただけませんアルか?」
王ドラは、ラオチュウに頭をさげる。

「それは、構わぬが…
ワシの弟子達は、サッカー選手達とサッカーで
対等に闘えるほど、サッカーを知らないぞ?」

「別に、王ドラ達は、誰にも邪魔されずに、
ドラリーニョを取り戻すのが目的であって、
サッカーの試合に勝つのが目的ではありませんから、
そのことについては、問題はありませんアル」

「うむ、なるほど、それはそうだな
では、後で、シーリンに頼んで、
都合のつく弟子達に試合に参加してもらう事にしよう」

「ありがとうございますアル」

「監督、聞いての通りです。 ワガハイ達は、
人数をそろえ次第、すぐさま、そちらに向かいます。
必ず、ドラリーニョを止めてみせます!」
ドラメッドⅢ世は、力強く言った。

キャッサーバは、涙を流しながら礼を言った。

キャッサーバとの通話が終了後、
ラオチュウは、早速、シーリンに、
試合に参加できるかどうか、
全ての弟子達に連絡をとらせた。

王ドラの言う通り、急な頼みだった為、

果たして、人数がそろうかどうかの不安は
王ドラとドラメッドⅢ世もなくはなかったが、
何とか、9人は集めることができた。

その9人の中には、かつて、ドラえもんとのび太が
中華一番カンフーコンテストに参加する為に、
修業相手になってくれたジャイチェンとスーチェンも
いた。

早速、王ドラとドラメッドⅢ世は、
キャッサーバに連絡をいれ、
人数が、そろったので、準備ができ次第、
すぐさま、出発する旨を伝えた。

キャッサーバも、サッカー協会に試合の設定を
依頼してくれていたらしい。

試合の日程は、1週間後
試合は、試合の関係者以外は、
完全にシャットアウトの練習試合という形式で
決まり、サッカー協会から、ドラリーニョのチームには
既に、その条件で了承済であった。


すぐさま、ドラリーニョとの友情を取り戻したい
王ドラにとっては、
試合の日程が、1週間後というのは、
いささか不満だったが、
ドラメッドⅢ世は、試合に参加してくれる
ラオチュウの弟子達は、
ほとんどが、チャイナタウンをでたことがないのだから、
異国の地の環境等も考慮すれば、自分達にも都合のいい日程だと
王ドラに言い聞かせた。

王ドラとラオチュウは、集まってくれた9人の弟子達に、
これまでの経緯を説明した。
シーリンから、内容をあらかじめ伝えていたので、
すぐに出立することには、いささか驚いていたが、

2人の説明が終わり次第、
弟子達は、すぐさま出立の準備をはじめた。

出立の準備をしている途中、
シーリンが、ドラメッドⅢ世に、
すぐさま出立するのならば、ドラえもんとのび太に
起きてもらって、見送りしてもらおうかと
訊ねた。

「シーリンさん、あの2人に起きてもらわなくても、大丈夫ですよ
また、ワガハイ達は、あの2人と一緒に行動しますから
それに、あの2人、特にドラえもんには、一分でも一秒でも
長く休んでもらいたいのです。」

「王ドラさんが言った様に、貴方との友情の為に、
あの2人が、疲労しながらも、色々な危険を顧みずに、
頑張ってくれたから?」

「それもありますが、ワガハイ達
ネコ型ロボットが大なり小なり持っている職業病ゆえに
ドラえもんには、一分でも一秒でも
長く休んでもらいたいとも思っているのです。」

「ネコ型ロボットの職業病?」

「そうです。 今からいう事は、人には、
理解できないことかもしれませんが、
人々の為に役立つこと、困っている人々から
頼りとされる立場であるべきネコ型ロボット、
いや、この22世紀の世界に生きる全てのロボット達は、
大なり小なり誰かに頼るという事が、下手くそという職業病です。
ワガハイ達、ドラドラ7の中で、ドラえもんが、
最もガッツがあると思います。 
だが、そのガッツに反比例でもするかのごとく、その職業病が
強いのです。 いざという時、その職業病が、行動のネックに
なって、窮地に陥ってしまわないかと、思わない時もないのです。
だからこそ、今回は、ドラえもんには、一分でも一秒でも
確実に、長く休んでもらいたいと思っているのです。」


画像

〔↑ドラメッドⅢ世の友情(※1)

(※1)3コマ目にでてくるネコ型ロボット以外のロボット達は
愛蔵版『ドラえもん』第20巻「ドラえもんの生い立ち」に
でてくるロボット達を参考に描きました。
尚、参考に描いているので、もとのデザインとは、
異なっておりますので、ご了承ください。



「わかったわ あの2人には、明日の朝にでも、
私達から、言っておきます」

「ありがとうございます。 あっ、くれぐれも
ドラえもんには、さっきの誰かに頼るのが
下手くそだなんてことは、言わないでくださいね。 
ドラえもんの事だから、そんなことを言えば、
まだ君は僕を信用できないのかなんて言って
怒りだすので…」

「わかったわ」
シーリンは、うなずいた。

出立の準備を完了させた
王ドラ、ドラメッドⅢ世、ラオチュウの9人の弟子達は、
空飛ぶタタミで、ドラリーニョのいるブラジルへ向かった。




ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 2

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック