『ルイージに歴史あり 外伝』その9

10月20日

第3章 〔スーパーマリオランド編〕

(4)俺は何をしようが獅子身中の虫なのか!?(前編)

西暦1987年 木々の若葉が新緑となっていた頃、
俺は、研究施設の自分のデスクで書類をみていた。

「宇宙催眠にかけることで、俺は
この研究施設のトップの地位に就いてやる!
俺が望むレールと世界を俺の手で作り上げてやる!」

その事を決心してから数年
宇宙催眠を利用して、
俺は、軍の開発部門の最高顧問になった。

俗にいう
とんとん拍子の出世だ。

宇宙催眠を利用すれば、出世など
朝飯前だと思う奴もいるかもしれないが、
宇宙催眠をもってしても、いとも簡単に
ここまでの出世はできなかったと思う。

ふと、俺は、
この数年の道程を思い出した。

テストパイロットに成りすまし、
見事、研究施設に潜入することができた。

憧れの戦闘ロボの設計の現場に、
潜入できたはずなのだが、
どうも公私の区別のついてらっしゃらない
グレート・メカニックの方々が、
若い女の助手達と
いちゃつきながら仕事をしてらっしゃるのが、
どうにも鼻について仕方がなかったので、
現場の様子など、当初は覚えてなかったが

待合室で助手から、
試作機の開発者である博士みずから、
直接、今回の試作機についての説明を
があるので、5分ほど待つ様に言われた。

助手の
「お前の様な奴が博士の様な偉大な人に
直接話をできるだけでも光栄に思え」と
言っている様な目つきが、正直気に入らなかったが

適当な世辞を言って、待つことにした。

5分ほど待たされた後、
博士専用の応接間に案内された。

彼の開発した戦闘ロボなくして
軍の勝利はなかったと賞賛される程の
人物である博士と出会えるとなれば、

真面目にロボット工学を学び
ロボット工学関係の仕事に就く夢を
みいていた頃の俺には
光栄の極みだと言って涙すら
流していたろうが

この研究施設の職場の現状をみれば、
博士と出会っても、そんな思いは
微塵もわかなかった。

なぜならば、
グレート・メカニックと助手達も
あの突撃部隊の連中同様、
輸送・補給部隊の人間を、完全に馬鹿にして
見下していたが、

この博士も
輸送・補給部隊の人間を、完全に馬鹿にして
見下していた いや、もっとはっきりと言えば、

輸送・補給部隊の人間を自分達と同じ人間としては
みていなかったからだ。

何せ、一切世間話もせずに、
本題に入る際の第一声が
「喜べ、今日は、貴様ら軟弱な蚊トンボ集団である
輸送・補給部隊でも
即効で軍の役にたつ開発をしたのだ」と
うそぶいていた。

博士は、
早速、その開発した試作機の写真と資料をみせた。

画像


資料をみた俺は、
その試作機が気に入らなかった。

いや、気に入らないという言葉では生ぬるい表現だ。
虫酸が走りまくっていた。

その試作機は、ネオ・パゴスといった。
地球でいうところのスタンドライトと
ニワトリの卵を足して2で割った様なデザインであるが、
ビーム・カッターなる武器を装備していた。
この戦闘ロボは、操作自体もコンピューターの
サポートシステムがついていた。
コクピットには、パイロットが傷つけられても、
回復することができる装置がついていた。

そこまでは、よかった。
パイロットが傷つけられても、自動的に回復できる装置も
さすがと思わせる様な発明だと思う。

しかし、この戦闘ロボのコクピットに、
装着されたシステムは、
パイロットに自動的に戦意を高揚させ、
さらに、痛みも感じることなく戦わせることができた。

この点が、虫酸が走ってならない点だった。

「どうだ、貴様ら軟弱な蚊トンボでも、
この装置があれば、偉大な突撃部隊隊長の御曹司様の様に
勇敢に戦えるぞ、素晴らしいだろう?」

博士が、本気で、このシステムを素晴らしい発明の様に
思っているのにも、虫酸が走りまくっていた。

俺からすれば、こんなシステムは
素晴らしい発明などとは決してなかった。

このシステムは、要は
輸送・補給部隊の人間を
強制的に、死ぬまで戦い続けさせるのにも等しい
システムだからだ。

博士は、このシステムを開発した自分を
自画自賛するセリフを連発しているが、
その様子には、このシステムを開発したことへの
良心の呵責すら微塵も感じられなかった。

その様子が、さらに虫酸が走りまくらせた。

厳密に言えば、俺は既に軍人ではない

だが、輸送・補給部隊の人間は、
軍人以外の道を生きられぬ、
軟弱者と揶揄され、
あげくの果てに
自我すら捨て去り、死ぬまで
戦えとでもいうのか

そこまでせねば、アンタ達は俺達を
認めぬとでもいうのか。

俺の怒りは頂点に達しようとしていた。

博士にも、俺の表情が、怒りが強烈に
現れているのが
みてとれたのだろう。

「オイッ! 何だ!? その顔は!?
まさか、この私の、偉大で慈悲深い発明が
気に入らぬとでもいうのか!!」

天賦の才を持ちながらも、
才能に溺れまくり、弱者の気持ちもわからぬ
そのうえ、気分的に
自分が気に入る奴しか周りにおかぬ奴らしい
セリフだと思った。

「ええっ 大いに気に入りませんなぁ!!
弱者の気持ちや辛さも、何一つ理解できぬ輩の
発明などはなぁ!!」

「な、な、なっ」
多分、この博士は、自分より下に思っている奴に
反発されたことなど一度もないのだろう。
怒りで言葉をつまらせた

もっとも、
俺も、こんな博士と、長話するつもりなど毛頭ない
博士に何の躊躇いもなく宇宙催眠をかけた。

この研究施設及び政府は、外部からの攻撃には
鉄壁の防御をほこっているのだろうが、
内部からの攻撃には、あまりにも脆かった。

俺は、宇宙催眠をかけた博士の人脈を
大いに利用して、政府や軍隊の重役達
さらには、故郷の最高権力者、
つまり御曹司の父である頭取すらも
宇宙催眠にかけた。

どいつもこいつも、わかりやすいぐらい
下流の出身者を完全に馬鹿にし、
同じ人間としてみていなかったので、
宇宙催眠をかけるのに、躊躇いなど
微塵もわかなかった。

俺に、苦汁を飲ませた御曹司にも
宇宙催眠をかけてやろうかと思ったが、
奴には、仕返しをすることにした。
だが、すぐには、しなかった。

宇宙催眠で、
強力なコネクションを手に入れることができたが、
宇宙催眠には、多大な疲労をともなうのである

まずは、宇宙催眠の濫用による疲労を回復
させたかった。
また、これが俺の本音だが、
御曹司により、濡れ衣をきせられ、
軍を脱走し、密航をしながら隠れる様な暮らしを
せざるを得なかった。
もう日の当たる場所にでたかったのだ。

いくら自分の望む世界を手に入れても、
濡れ衣を着せられた状態のままは、
勘弁願いたかったのだ。

コネクションを手に入れ、
研究施設を自分の根城にしてからの約2年間は、
自分の濡れ衣を取り去り、俺が宇宙催眠で
手に入れた権力を使うに相応しい地位に就くために、
自分の存在をひた隠しにしつつ、その準備に徹した。 

準備が完了後、
俺は、コネクションを利用して

御曹司のふしだらな行いを糾弾(御曹司は、其の手のことには、
ちょっと叩けば、ホコリが
たくさんでるので、糾弾は非常に楽だった)

御曹司を遠方の僻地へ左遷した、自分の濡れ衣を
取り去ることができた。
ついでに、俺に濡れ衣を着せる片棒を担いだ
あのオペレーターの女も同じ僻地へ左遷した。

本来ならば、その地位をも
はく奪して、軍そのものから
追放したかった。 しかし、地球ではいざ知らず、
俺の故郷では、軍人というのは、ごく一部の例外を除き、
軍人以外の道を生きられない また、あんな奴でも
シンパシーを感じる人々もいるので、不要な反感も
買う必要もなかろうと思い、左遷程度にしたのである

俺は、コネクションを利用して、
表面上は、御曹司の不祥事をみごとに糾弾したことを
讃えられて、研究施設の最高顧問の地位に就くかたちを
とることにした。

(ちなみに、この最高顧問という地位は、
研究施設でも最高の地位であるが
あの博士が、研究施設で、戦闘ロボの開発の中核を
担う様になって以来、長年にわたり、
どういうわけか空位だったので
この地位なら、俺が望むに相応しい地位であり、
誰にも、大して文句を言われることないだろうと
思って、この地位に就くことにしたのである)

画像


濡れ衣を着せられて
軍隊を脱走して、あてもない放浪をしていた男が、
宇宙催眠の力で、濡れ衣をとりさっただけでなく、
俺が望むレールと世界を俺の手で作り上げることすらもできた

最高顧問の椅子に座った時に、そのことが実感できたのだろう
俺は、生まれてはじめてではないかと思えるぐらい
めちゃくちゃ歓喜した。

これで、何の問題もなく、
やっと俺は長年の夢でもある戦闘ロボの開発に、
しかも中核として携われる。

上流の出身者だろうが、
下流の出身者だろうが、
いずれは、俺は故郷で名実ともに認められる

そうすれば、この世界も
俺の望む世界へと変わるのだ。

最高顧問の椅子に座って間もない頃は、
俺は、信じて疑わなかった。

だが、俺はある事柄を、
嬉しさのあまり、うっかり忘れていた。

所詮、俺の出世は、
力で、無理やりもぎ取った出世ともいえるが、
ある意味、この出世は虚構ともいえること

所詮、俺がいかに出世しようが、
上流の人間達は、下流の出身者を
決して同じ人間だと認めていないこと

また、俺と同じ下流の出身者達も、
俺の出世を妬みこそすれ、俺を
認める者など決していないこと

最高顧問に就任してから、
間もなくして、まるで、俺に
それらのことを思い知らせるがごとく、
研究施設の人間、軍部、議員、民間企業、マスコミとの
政争及び諍いが起きた。

俺には、宇宙催眠で作り上げたコネクションがあるので、
決して、その政争及び諍いで負けることはなかったにせよ、
何らかの処置をせざるを得ないことには変わりはなかった。
そのことで、非常に忙しくなることも、
ほとんど日常茶飯事だったので、満足な休息などなかった。
また、そんな状況なので、宇宙催眠も、めったやたらと
使えない状況になっていたので、宇宙催眠で敵を黙らせるという
手段はとれなかった。

そんなことだから、もともと整理券でも
配りたいぐらい多かった敵が、
月日が流れるにつれ、増えていった。

それが、西暦1987年の俺の日常だった。

(眠いな… 午後からの時間までは、
まだ40分近くはあるから、
また、戦闘ロボ パゴスの近くで、ひと眠りするかな)
書類を置いてたちあがろうとした時だった。

突然、俺の高性能無線のランプが点滅した。
俺は回線を開いた。

「タタンガ様、密偵からの報告です。
とても厄介なことが起きました」

俺が少ない時間を利用して開発した
護衛用ロボットであるロケトン1号だった。

ちなみに、
このロケトンは1号から8号まである。

「とても厄介な事とは?」

「奴らが あの連合軍が、宣戦布告をしてきました。
しかも、敵は総力戦の構えです」

「な、な、な、何だと!!?」

眠気など簡単に吹き飛ばし、十二分に戦慄させる程の
内容だった。


-(5)俺は何をしようが獅子身中の虫なのか!?(中編)へ続く-


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック