『ルイージに歴史あり 外伝』その11

12月18日

第3章 〔スーパーマリオランド編〕

(6)弱者が強者に勝つ常套手段

「者ども、止まれ!!」
黄色の機体から号令がかかる。

部隊の機体たちは進軍を止めて、
黄色のクイックの機体のみが、俺達に向けて一気に加速する。

加速しつつ、黄色の機体は、飛行機形態からロボット形態へと
変形して、俺の数メートル手前で止まった。

「お前が、有名な獅子身中の虫かい?」
クイックが話しかける

どうやら、俺の機体の通信の周波数に合わせて
通信をつなげた様だ。

当時は、まだまだ若かった俺が言うのも、なんだが
どうも、新米特有の粋がりというか、
若者特有の過剰な自信が感じられる声だ。

まぁ、簡単に言えば、鼻につく声ということだ。

「ああ、そうだが、お前さんが、
フォーム・アーミーで売り出し中のクイックさんかい?」
よくよく考えれば、獅子身中の虫などと俺の気に入らない
あだ名を言われているのに、俺は、静かに肯定していた。
敵に呑まれない様に、平静を保つことのみに集中していたからである。

「そうだよ ただ、お前の様なくたばることが決まっている奴とは違って
俺は、売り出し中ではなくて、誰もが認めるフォーム・アーミーの
次期頭領となることが決まっている男さ」
過剰な自信をもつ奴ならではとでもいうべきか。
簡単に答えてくれればいいものを、いらぬ自慢もまじった答えだ。

「なるほど、でも、よく軍の監視をくぐりぬけて、
管轄内に侵入できたのは、流石というべきだが、
はっきり言って、無謀だろう この俺がよびかければ、
すぐさま、他の部隊が」

いきなり、クイックは大笑いした。
笑い方も、鼻につく笑い方だ。

「言っていることは、ごもっともだが、お前の軍隊は
助けに来ないぜ それに俺達が潜入できたのは、
流石でも何でもない 俺達は、同盟を結ぶことに
なっているのだからな」

「何だと? 同盟を結ぶことになっている?
貴様達は、俺達に宣戦布告しにきたのだろうが
つまらぬハッタリはよせ」

「ククク、ハッタリ? 俺達
連合軍は、お前と違って、
自分達の兵力というものを完璧に理解できているさ
本気で、俺達は総力戦なんて挑むと思ったのか?」

クイックの鼻につく笑いが混じったセリフに
俺は思わず息をのむと同時に、
疑問が一気にうかんでは、氷解した。

そもそも、兵器の性能が上回っているという
アドバンテージがあるとはいえ、
誰よりも自分達の国力の低さが分かっている奴らが、
自分達よりもはるかに国力のある相手が総力戦を
挑むのも、あまりにもおかしかった。

さらに、何故、コイツらが、軍の通信の周波数を
知っているのだ。

また、俺が知らせようと知らせまいが、
自分達のエリアに敵が潜入して、

かれこれ時間が経っているのに、
何のリアクションもないのも、おかしかった。

「まぁ、せめてもの情けだ 
お前がくたばる前に、真実をおしえてやろう
今回の戦いは、お前を完全に消す為に、全て仕組まれていたのだ
お前の故郷の議長が中心になってね」

「やはり、大方、そんなことだろうと思ったよ。
しかし、それでは、
何故、俺を消す為に、お前さん達
連合軍がでてくるのだ?」

「ククク、答えは簡単だよ もはや、連合軍には、
戦う余裕なんて、全くないからだよ」
鼻につく笑いと鼻につく明るい調子でクイックは言った。

「お前の故郷は、俺がお前を消した後、
お前のシンパである頭取たちも、討ち取ることで、
無理やり表舞台から引退させる
その後は、議長が新しい頭取となり、俺達と講和と同盟を結ぶのさ」

「つまりは、俺は、お前さん達にとっては、
講和と同盟を結ぶための人身御供というわけか?」

「そういうわけだ。 お前も、軟弱者、獅子身中の虫として
さんざん故郷に迷惑かけてきたのだろう? 最期ぐらいは
故郷の為に礎になったらどうだい?」

「ほぅ、ご高説は、痛み入る。 しかし、次期頭領となられる方が
軟弱者を大勢で取り囲んで、俺を倒す真似はいだだけないと思うけどね」

「何だと?」
クイックの声の調子が変わる。

「だって、そうだろうが 人を軟弱者と蔑むのだから、お前さんは
軟弱者じゃないのだろう。 そんな奴が、一騎打ちで軟弱者を
倒そうとしないのか? 
それとも、倒すこともできないと言った方がいいのかな?
もし、そうなれば、軟弱者以下じゃないのかな?
なぁ、どう思うかな? ロケトン達よ」

こうなれば、一か八か敵を煽って、一騎打ちに持ち込むしかない。
俺は、ロケトン達に、賛同を求めた。

俺の意図を察知したロケトン達は、通信を外部出力に切り替えて
一騎打ちもできないなんて、何が次期頭領だ、笑わせるといった意味合いの
言葉を次々と言った。

「貴様…」
クイックの声に怒気が含まれてきた。

「上等だ。 次期頭領として、一騎打ちで決着をつけてやる」

まんまとクイックは、のってくれた。

「なるほど、流石は次期頭領だな 
では、俺の部下も、手出しはさせないから、お前の部下達にも、
手出しはさせないでくれよ」

念のために、さらに煽る様に言った。
もっとも、俺の部下達であるロケトンは、
戦闘に特化したロボではないので
手出しをしたくても、できないといった方が正しいけど

「上等だ! 者ども!! 一切の手出しはまかりならぬぞ!!」

正直、パイロット特性のない奴が、新鋭の戦士に
一騎打ちを挑もうなど無謀極まりないことだったが、
挑まざるを得なかった。

奴らの追跡をかわすことなど、俺にはできない。
また、自分を認めぬ奴らに、
獅子身中の虫と認識されたまま、
倒されるのは、まっぴらごめんだからだ。

まがりなりにも、かつては俺も軍人だったのだ。
ただで散ってやるつもりもなければ、
何の勝算のない戦いをするつもりは全くない。

「それでは、一騎打ちの開始といこうか!
とっとと、かかってきやがれ!」

パイロット特性もない、一騎打ちなどしたことはない
正直、怖くて仕方がなかったが、半ば無理やりに
俺は大声をだした。

勝算は、クイックとの会話中に、必死でひねりだした。
弱者が強者に勝つ常套手段
奇策を利用する以外に勝てない。

それは、この戦闘ロボ パゴスのアドバンテージ、
敵が、おそらく知り得ていない
アドバンテージを利用することだ。

自分からしかけない。
まずは、防御に徹して、
相手に攻撃をさせて、相手のエネルギーを尽きてから
そのアドバンテージを利用するつもりだった。

だが、この戦法は、戦いが開始してから
たった3分で頓挫する。

「やはり、議長の情報どおり、頑丈さとエネルギー弾以外は、
機体性能は並程度、おまけにパイロットの能力は、
みみっちい操縦しかできないド素人レベルだな」

うっかり、互いの通信をオフにしていなかったからだろう
クイックの嘲る笑い声が聞こえる。

俺は、可変型のロボットのスピードというものを
自分でも気づかぬほど、甘く見過ぎていた。

可変型ロボの飛行機形態の機動力は、実際間近でみると、
俺の想像を大幅に上回る速さだった。

しかも、このクイックは、飛行機形態のスピードだけに頼った
戦い方ではなかった。
飛行機形態のスピードには及ばないが、
ロボット形態のスピードも混ぜていた。

簡単に言ってしまえば、2つの形態の性能の使い分けと
2つの形態のスピードの緩急を使い分けた戦い方だった。

戦いが開始してから、30秒で、俺は、攪乱されてしまい、
一方的な戦いになってしまった。


画像



幸いにも、奴の攻撃方法が格闘攻撃のみだという事と、
80年代当時、この宙域では、最高レベルだった
戦闘ロボ パゴスの頑丈さのおかげで、
何とか致命的なダメージだけはさけることができたが、

俺が負けるのは、時間の問題だった。

正直、何の活路もみいだせず、
勝機も、ほとんどなしに等しいので
泣いて命乞いをしたくてたまらない気分だった。

だが、そんなことをしても、俺に活路はないことは、
いやでも、わかっている。

「どうだ? このまま勝負にならねぇから、泣いて命乞いでもするか?
もしかしたら、俺も人の子だから、たすけてやらぬでもないかもね」
クイックは、例の鼻につく笑いで言った。

「けっ、せいぜい、うたっていろ どのみちさ、
俺が勝つのだからな」
はっきり言って、半ば虚勢になっている。

「哀れだな もはや虚勢をはるしかないか」
クイックは攻撃を続ける。

格闘攻撃だけとはいえ、その格闘攻撃も
俺の故郷の戦闘ロボとは比較にならない器用さもあって、
俺は全く対応できなかった。

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もはや、虚勢でもはりつづけることで、
惨めな気分で負けることだけは避けたいという
思いしかなかった。


戦いが開始してから、約5分、
どうにか、致命的なダメージこそうけていないにせよ、
ダメージは決して軽視できない。

クイックの可変型のロボットの攻撃の前に、
虚勢をはることすらできなくなってきた。

(くそっ、結局、俺の人生は、最期も惨めな気分で
泣くしかできねぇのか!)

そんな思いが俺の脳裏に駆け巡っていた時だった。

ふと、俺はあることに気づいた。

可変型のロボットは、
飛行機形態だろうが、ロボット形態だろうが、
変形そのものは、自由自在ではない。
必ず、決まったリズムと順番で変形する。

そのことに気づくと、
さらに、俺は気付いた。

クイックの攻撃は、確かにスピードの緩急を巧みに利用した
変幻自在とよんでもさしつかえがない攻撃だろう。

だが、決まったリズムと順番で変形するのだから、
その攻撃にも、ある程度のパターンがあった。

(そうだ! さすがのフォーム・アーミーでも、
変形と攻撃のパターンさえ覚えてしまえば、勝機がある!
パターンさえ覚えて、アドバンテージを利用すれば勝てるはずだ!)

消えかかっていた闘志の炎を、
俺はもう一度燃やす。

戦いが開始してから約8分、
俺に、好機がおとずれた。
戦闘ロボ パゴスのアドバンテージを利用できる好機が

俺は、エネルギー弾をくりだした。

「相変わらず、ワ、わわっ!?」
クイックは、ワンパターンな攻撃だと言おうとしたのだろうが、
できなかった。

エネルギー弾が、拡散したからだ。
これこそが、議長も連合軍も知り得ない
(俺が、宇宙催眠以外に、
政治的なアドバンテージを作る為に、
奴らに隠していたので、知り得ないのは当然だが)
戦闘ロボ パゴスの最大のアドバンテージ
この宙域では、兵器の開発の歴史において、
80年代で最も画期的な開発と言われた
拡散型のエネルギー弾である。

「ば、バカな!? エネルギー弾が!? くそっ!?
かわせ!?」

クイックの回避行動を予測して、放った拡散型のエネルギー弾である。
さすがのフォーム・アーミーの新鋭の戦士でもよけることはできなかった。

拡散したエネルギー弾は、コクピットに被弾はしないものの、
みごとにクイックの機体に命中
機体は、半壊した。 戦闘不能は、誰がみてもあきらかだ。

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俺は、半壊したクイックの機体めがけて、
機体を全速力でダッシュさせて、タックルを炸裂させた。

その勢いで、クイックの機体ごと、エリアを離れる。
ロケトン達も、エリアを離れる。

クイックの部下達は、
この様な展開は、全くの予想外だったのだろう。
ほんの30秒かそこら程だが、呆然と俺達を見送ってしまった。

だが、30秒とはいえ、このエリアから離れて、奴らを撒くには
十分すぎる時間だった。

「ロケトン達よ この様なことになった以上、
研究施設には戻れない 秘密のアジトに向かうぞ」
ロケトン達に指示をする。

秘密のアジトとは、俺が、かつて宇宙催眠の習得の為に
すんでいた惑星、 あのチッキンがいる惑星である。
多分、あのチッキンの生態の面白さが忘れられなかったからだろう。
研究施設の最高顧問になった後も
俺は、密かに、かつて住んでいた家を買い取り、
家の地下に、規模は研究施設よりもはるかに劣るが、
戦闘ロボのラボラトリーを作っていた。

「ロケトン1号、2号、3号よ 秘密のアジトに到着後、
さっそく戦闘ロボ パゴスの修理をしてくれ
ロケトン4号と5号は、コイツの機体を分析してくれ
めったにお目にかかれない貴重な機体だ。
きっと、俺にとって、よいフィードバックを得られよう。

他のロケトン達は、このクイックから
色々と聞かねばならぬことがあるから、
それの手伝いをしてくれ」

ロケトン達は、了解した。

秘密のアジトに到着後、
俺は、クイックをアジトの一室に連れてきた。
無論、武器は取り上げて、
妙な真似をさせぬ様に、ロケトン達に
銃を向けさせている。

クイックは、過去に何度かみた
フォーム・アーミーのパイロットスーツを着ていた。
ただ、クイックの場合、指揮官専用なのか
そのパイロットスーツは機体同様、黄色だった。

クイックの顔つきは、
やっぱり、あの鼻につく声のとおりというべきか
20歳にも達していない若者だった。

また、これも指揮官の特権なのか、
義務なのかどうかわからないが、
額に妙な光沢のある丸い宝石みたいなのをはめ込んでいた。

クイックは、俺と闘ったときとは違って
連れきた時には、
何やら焦点の定まっていない目つきで
独り言をつぶやいていた。
そのつぶやきが、小声なので、全く聞き取れない。

「どうやら、タタンガ様と違って、
コイツは、今まで、負けというのを経験した事がないようです。
そのうえ、軟弱者だの獅子身中の虫だのと
揶揄されている人間に負けたのですから
尋常でないショックを受けた様ですね これは、悪い夢だの
あり得ないだのと言って、現実逃避しているみたいですね」
ロケトン7号が説明してくれた。

「現実逃避も鼻につく野郎だ オイッ!」
確実に窮地を脱する為にも、
色々と聞きださねばならぬことがあるので、
現実逃避されてはかなわない。

軽くクイックの頬に平手打ちをくらわした。
だが、何の効果もなかった。

「オイッ! コラ! 現実に戻れ!!」
俺には決して楽観できない状況である為、
焦りがあった。

その焦りが、何度か平手打ちをくらわせている内に、
つい力をいれさせたのだろう。

クイックの額にはめ込まれていた
妙な宝石が、頭からはずれてしまった。

「な、な、な、なんだぁ!?」
その次の瞬間の現象に、俺は、驚かざるを得なかった。

クイックの顔と体つきが、20歳にも達していない若者から
40代半ばの中年の顔と体つきに変わったからだ。

-(7)地球への遠征へ続く-

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