『ドラえもん 友情伝説 ザ・ドラえもんズ 番外編』 その5

1月19日

(5)ドラえもんの誇り

スタントの言う通り、エル・マタドーラが
闘技場から姿をあらわした。

その様子に、のび太は、ただただ唖然とし、
ドラえもんは、苦虫を噛み潰した様な表情になった。

エル・マタドーラは、何やら巨大な人力車の様な物に乗って
登場した。 それをひいているのは、2体のイヌ型ロボットだった。
その内の一人が、あのスタントだった。

しかも、その乗り物の両脇に、数人の美女達いたが、
この美女達が、バラの花びらをまいていた。

また、エル・マタドーラの後ろには音楽隊が
曲名は、まったくわからないが、何らかのクラシック音楽を
奏でながら、歩いている。

幾千のバラの花びらが舞う道を、音楽と共に
従者に乗り物をひかせて、登場する。

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めったにお目にかかれない程、
キザな登場だったが、
ドラえもんが苦虫を噛み潰した様な表情になったのは、
それだけではなかったからだ。

何と、闘技場からでてきたエル・マタドーラが、
大広場の北側の大通りにさしかかった瞬間、
大通りの両端にいた住民達は、土下座したのである。
いや、大名の参勤交代よろしく、土下座させているのだろう。

(嘆かわしい いくら悪のチップのせいだとはいえ、
嫌味でキザなだけでなく大名気取りになっている!)
ドラえもんの怒りのボルテージが上がる。

エル・マタドーラが乗った人力車の様な乗り物が
北側の大通りを通り抜け、大広場にいるドラえもん達の
数メートル手前に停止した。
(同時に、音楽隊の演奏とバラの花びらがまくのも停止する)

無論、大広場にいる住民達を土下座させているのは
言うまでもない。

「よく来たな、歓迎してやろう メガネザルと青いタヌキよ」

テレビでみた時、いや、テレビでみた時以上に
エル・マタドーラの喋りは、嫌味で傲慢だった。

「誰がメガネザルだ!」
「僕はタヌキじゃない!」

「まぁ、吠えるな。 噂のメガネザルと青いタヌキが
ご足労かけて、この地へお越しくださったのだ。 
こうやって出迎えて、歓迎してやらなければ、
失礼というものだからな 僕の闘牛でもみて
おもてなしをして差し上げよう ついてくるがよい
ああ、あと下々の者達よ、ちゃんと掃除をしておけよ」

「いいだろう! 
君の目を覚まさせてやる為にも、
ついて行ってやろうじゃないか!」

大名の参勤交代のごとく
住民達に土下座させ
挙句の果てに、自分達が登場の為にまいた
バラの花びらを住民達に片づけさせる。

そんなエル・マタドーラの傍若無人さに、
ドラえもんは、怒りのボルテージを上げる。

だが、のび太は、怒りのボルテージが上がらなかった。
冷静に対処しなければならなかったとかではなかった。
エル・マタドーラが闘牛と言った時の、土下座している
住民達から怯えの声があがっていたからだ。

「うわぁ、また、アレをやるのか!」
「勘弁してよ、本当に」
「でも、観に行かないと、アイツ、何しでかすかわからないよ」

(何をする気だろう?)
その声を聞き、のび太は不安になる。

闘技場には、到着したが、
すぐに、闘技場内にはいらなかった。

「僕は、闘牛の準備に入る。 10分程したら、スタント、
この者達を、観客席まで案内してやれ」

エル・マタドーラが、闘技場に入ってから10分後、
スタントがでてきた。

スタントの案内で、闘技場内に足を踏み入れた瞬間、
のび太に、何とも言えぬ感覚が走る。

「ねぇ、ドラえもん この闘技場って何か変じゃない?」

「何が変なの?」

「いや、何というか、この場所だけ、違う空間というか
違う空気というか、とりあえず、何か変だよ」

ドラえもんは、何がどう変なのか、
具体的に、言えといった表情だ。

ボキャブラリーが豊富な者なら、もう少し、
具体的に述べることができるだろうが、
のび太のボキャブラリーでは、それ以上のことは
述べられない。

「何だ、アンタも感じたのか」

スタントが会話にはいる。

「僕達、ロボットは、全く感じとることはできない。
全ての人間とはいかないが、人間は感じとることがあるのさ
この闘技場の特殊な空気みたいなものをね」

「特殊な空気?」
ドラえもんは、怪訝そうな表情だ。

「僕も感じとることができないので、そういう表現しかできない
この闘技場の内部は、特殊な空気に覆われているとしか言えない
なぜ、そんな特殊な空気に覆われているのかも、わからない
噂では、この闘技場では、イージーホールの歴史に関わる
重要な戦いが、何度も行われていたから、特殊な空気に覆われる様に
なったともいわれている。 まぁ、それについては、お望みとあれば、
時間がある時にでも説明しよう 
まぁ、とにかく、この通路を通れば、観客席だ。」

スタントの案内で、観客席に座ったドラえもんとのび太
ちなみに、観客席の位置は、グラウンドに特設された観客席である。

「闘牛か エル・マタドーラは、
誰もが認める一流の闘牛士になるのが夢だった。
聖ネコ型ロボ学園を卒業後、スペインで闘牛をしていた。
立場や実績、その他諸々を含めても
まだまだ一流の闘牛士には遠く及ばないけど、
正直、女の子にモテモテなのは、気に入らなかったけど、
エル・マタドーラの闘牛は、いつも陽気だった。
見ている者を魅了していた。 いつも楽しさがあったなぁ」
ドラえもんは、しみじみと言った。
そんなドラえもんに同意でもするかのように、スタントも
頷いていた。

グラウンドの東側のゲートが開いた。

エル・マタドーラが、登場した。

何のこだわりなのかは、わからないが、
この時も、幾千のバラの花びらが舞う道を歩いての
登場である。

(キザといえば、スネ夫だが、
スネ夫でも、ここまでやらないな)
のび太は、呆れていた。

グラウンドの西側のゲートが開いた。

(闘牛なのだから、でっかい牛でもでてくるのかな)
のび太は、西側のゲートをみる

だが、ゲートからでてきたのは、
冴えないが、陰険そうな顔つきの
肥満気味のネクタイにスーツ姿の中年男だった。

「でてきたな、あれが今回の闘牛の牛だよ」
スタントは平然と言った。

「はぁ? 何を言っているの? あれは人間だぞ!?」
スタントの言葉にドラえもんは驚いた。

「おいっ! 貴様! こ、こんなことしてタダで済むと思っているのか!!」
中年男は、エル・マタドーラに恫喝している様だが、表情は青ざめて、
声も震えていた。


「さて、ご来場してくれた下々の諸君、今回も、僕が華麗な舞いで、牛と戦う様を
よくみていただきたい。」
エル・マタドーラは、中年男の恫喝など完全に無視して、グラウンドと観客席に
響くぐらいの大きな声で言うと、四次元ポケットから、
牛のマークがついたマントと細身の竹刀の様なものをとりだした。

「あれこそは、エル・マタドーラ専用ひらりマントと
エル・マタドーラ専用の剣であるゴムの剣だ」
スタントが頼みもしていないのに、説明してくれる

エル・マタドーラ専用ひらりマントとゴムの剣をみた
中年男が、よりいっそう青ざめて恐怖している。

「さぁ、闘いの開始だ! かかってきたまえ!」
エル・マタドーラが、カッコつけて言うが、
中年男は、ただただふるえているだけだ。

「何だ、こないのか! では、こちらから攻撃させてもらうぞ!」
エル・マタドーラがダッシュして、一気に間合いをつめた。

「うぎゃぁぁぁ!!!」
その次の瞬間、何の打撃音が聞こえたわけでもないのに、
いきなり、中年男が絶叫をあげて倒れ、のたうち回った。

エル・マタドーラは、元の位置に戻り、冷ややかにみていた。

(何かしたのだと思うけど、
めちゃくちゃ踏み込みのスピードが速い!!)
エル・マタドーラの踏み込みのスピードに、のび太は、驚かざるを得なかった。

エル・マタドーラは、ゴムの剣を振り上げた。

「ま、ま、待て、た、た、助けて あ、あれは、
私たちもやりすぎたと、思うから、 だ、だ、だから話し合おうじゃないか」

腹部を攻撃されたからか
中年男は、涙や鼻水を流しながら、
腹部をおさえながら、命ごいをした。

「神聖かつ厳粛な戦いに、命ごいは存在しない
倒すか倒されるか それ以外に存在はしない」
エル・マタドーラは、ゴムの剣を中年男に降り下ろそうとした。

「やめろぉ!!! エル・マタドーラ!!」
ドラえもんが、会場全体に響き渡る程の咆哮をした。

ドラえもんは、観客席から、グラウンドへ躍り出ると、
エル・マタドーラと中年男の間に立った。

「何のマネだ!! こんな弱い者いじめをして、
君は恥ずかしくないのか!」

「恥ずかしい? 何のことだ? 
僕は、ただ普通に闘牛をしているだけだが」

「な、なにが闘牛だ! こんなおじさんを君は
ただいじめているだけだ! 人として最低の行為だぞ!」

「オイオイ、場違いなセリフを言うタヌキだな
僕達はロボットだろう ロボットに、人として最低の行為という
形容はあてはまらないぞ」
エル・マタドーラは平気だ

「ロボットでも、世の為に礼節と道義をわきまえるべきだ!
君は、女の子相手に、聞いているほうが恥ずかしくなる様な
セリフをはくが、誰よりも、ボク達の誓いは覚えているはずだ!
この世に生まれたかぎりは、いつか世の為、人の為に役立つことを!!」
ドラえもんもひるまない。

エル・マタドーラの顔つきが変わった。

(な、何だ!? あの冷たい顔つきは!?)
のび太は、息をのむ

「世の為、人の為に役立つ? 
誓いだが何だか知らないが、
そんなちり紙ほどの価値もない考えは、頭の悪いお人好しか
頭の悪い子供にでも、言っとけ
そんなくだらぬことを信じていれば、
俺は、とっくに、無様にくたばっていた」

(何だ? あの言い方は 何か変だぞ)
のび太は、妙な感じがした。
口では上手く言えない妙なものを

「ち、ちり紙ほどの価値もない考えだとぉ!!」
自分達の誓いを、ちり紙ほどの価値もないと言われて
激昂しているドラえもんは、のび太が感じとったものに
気づかなかったが

「もう、許さん! こうなったら、ボクが倒してやる!」
ドラえもんがエル・マタドーラにファイティングポーズをとる。

「フッ、俺は手負いのタヌキなど相手にする気はないが」
エル・マタドーラの顔つきが、もとの嫌味でキザな顔つきに
もどる

「いいだろう、タヌキを相手に、
僕の技を披露してあげるのも、また一興か」
エル・マタドーラもファイティングポーズをとる。

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「ドラえもん、闘う気か!? だったら、僕も!」
のび太も、観客席からグラウンドに躍り出る
(もっとも、ドラえもんの様な勢いはないので、
躍りでたのはいいが、途中でこけていたが)

だが、すっかり怒りで、我を忘れているドラえもんは、
のび太が駆け付ける前に、エル・マタドーラに向かって
突進する。

ひみつ道具ばかり注目されがちだが、
ドラえもんの馬力は約129馬力、750㏄バイク
約1.6台分の馬力である。

その馬力から繰り出される突進には、
そこいらの軽自動車をはるかに上回るスピードがある。

だが、そんな突進をエル・マタドーラは軽くかわした。

ドラえもんは、ターンして、体勢を整えて
再び突進するが、エル・マタドーラに、かすりもしなかった。

「どうしたのかな? 青いタヌキよ
ただ突進するだけでは、僕は倒せないが」
エル・マタドーラは涼しい顔である。

「くそっ! これならどうだ!」
ドラえもんは、エル・マタドーラに飛び蹴りを放つ
ラオチュウから学んだカンフーでエル・マタドーラを
倒そうとする。

カンフーの虎とうたわれたラオチュウから学んだとはいえ
王ドラのカンフーに比べれば、ドラえもんのカンフーなど
その練度は、はるかに低い

しかし、それでも、中華一番カンフーコンテストで
のび太とともに、王ドラを倒して優勝したのだから、
その技量は、決して素人のレベルなどではなく、
カンフーを知らない者になど対処できるものではない。

だが、カンフーを知らないエル・マタドーラは
そんなドラえもんの蹴りやパンチを紙一重でかわす

「どうした どうした その程度か
眠たくて、思わすあくびがでるぞ」

ドラえもんの攻撃をエル・マタドーラは紙一重で
かわし続ける。 無論、ドラえもんの攻撃を
どうにか、かわすのが精一杯だとかではない

最小限の動きで、余裕をもってかわしているのである。

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だが、激昂して、すっかり冷静さを欠いている
ドラえもんはそんなことに気づかない。

30秒もすると、息切れして、ドラえもんの攻撃の
スピードも低下する。

スピードが低下すれば、尚更
エル・マタドーラに、攻撃が当たるはずなどない。

だが、激昂しているドラえもんは気づかない。

それだけドラドラ7の誓いが、ドラえもんにとって
神聖なものであり、ドラえもんの誇りだったからだ。 
その神聖な誓いがあればこそ
ドラえもんは、ぐれることなく、頑張ってきた。

それを侮辱することは、例え親友でも許せなかった。
だが、皮肉にも、そんな思いが、闘いにおいて、
欠かすことのできない重要なファクターである冷静さを
ドラえもんからうばっていた。

闘いが開始してから1分も経過していないのに、
ドラえもんは、攻撃ができない程、それどころか
立っているのも精一杯なぐらい息切れしていた。

それに対して、エル・マタドーラは息切れどころか
汗すらかいていなかった。 おそらく疲労すらないだろう。


「どうしたのかな まだ1分も経過していないのに、
疲労困憊かな つまらないな まだこのひらりマントすら
使用していないのに」

「く、くそっ ま、負けるものか」
ドラえもんは、攻撃をくりだそうとするが、くりだせない
パンチすら繰り出すどころか、少しでも油断すれば、倒れてしまうぐらい
疲労していた。

「では、止めをさそうかね」
エル・マタドーラは一気に踏み込んだ。

「うぎゃあぁぁぁ!!!」
絶叫がグラウンドに響き渡る

だが、この絶叫はドラえもんではなく、のび太だった。

駆け付けたのび太が、間一髪で、
ドラえもんを体当たりで突き飛ばしたものの、
ゴムの剣が、のび太の肋骨のあたりに命中したのである。

「ぐわぁぁぁ! 痛い! 痛い! 痛い!!」
のび太は七転八倒した。

「の、の、のび太くん」
ドラえもんは、突き飛ばされた勢いで、転んでしまったが、
もはや起き上がる力すらない。

「何かしらけたな」
そんな2人の様子を冷ややかに、みていたエル・マタドーラだったが、
ゴムの剣とひらりマントをしまい込んだ。

「おいっ! スタント」

エル・マタドーラに呼ばれたスタントが、駆け付けた。

「今日はしらけたので、闘う気がおきないな
この青いタヌキとメガネザルは、近くの病院に連れておけ
運さえよければ、3日後に行われるパーティには間に合うだろう」

「パ、パーティだと?」

エル・マタドーラの顔つきが変わる。
のび太が妙なものを感じ取った顔つきに、

「教えてやろう 青いタヌキよ 
この俺のセッティングにより、
3日後、イージーホールのロシアで、
ドラ・ザ・キッドとドラニコフの闘いが、イージーホールのブラジルで
王ドラ、ドラメッドⅢ世とドラリーニョの闘いが
このイージーホールのスペインで、お前たちとこのエル・マタドーラとの
闘いが、同時に行われていることになっている。」

「な、なんだって!?」

「今ごろは、お前の仲間達にも、
この様に、ドラリーニョとドラニコフが直接出向いて
知らせてくれるだろう。 まぁ、とにかく、この3日間を
体力を回復させるなり、怯えて逃げる準備をするなり、
好きなように使うがいい」

冷たい笑いが闘技場全体に響き渡る。

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