『ドラえもん 友情伝説 ザ・ドラえもんズ 番外編』 その13

1月21日

(13)エル・マタドーラの過去

「ば、馬鹿にするなよ! ボクの勇気と頑張りには、限界なんかあるものか!!」
左側頭部と両肩のダメージを、あらん限りの気力で懸命にこらえながら、
ドラえもんは、フルパワーでエル・マタドーラを上空へ投げ飛ばした。

(ぬわぁぁぁ!?)
10数メートル上空へ投げ飛ばされてエル・マタドーラは恐怖する。
この後の展開が容易すぎるぐらい想像できるからだ。

(落下!? このまま地面に激突!?)
投げ飛ばされ、頭から10数メートルの高さから地面へ落下しはじめる。

「勝ったよ、のび太君 エル・マタドーラには、なす術はないよ」
ドラえもんは、今度こそは自分の勝利だと強く思った。

地面へ激突までの時間は、数秒もない。
しかも、空中では、
地上にいる時の様に、自由自在に
フットワークなど活かせるはずもない。

ましてや、空中では、
ひらりマントを自由自在に使えるわけもない。

このまま、頭から激突してしまえば、さすがのネコ型ロボットでも
致命傷を免れない。

(このまま終わるのか!?)

(まだ、闘牛士として何もしていない! 

まだ、闘牛士の何たるかもみせていない!!

そんな状態で、終わることなど絶対に嫌だ!!)

エル・マタドーラの心が恐怖を打ち消さんと燃え上がる

「ぬおおぉぉ!!」
エル・マタドーラは、もてる限りの力で
ひらりマントを地面にむけて投げた。

通常のひらりマントと違い、

闘牛士のケープを模して、作られた
エル・マタドーラ専用ひらりマントは、
まっすぐに地面に突き刺さった後、
すぐに、地面に倒れようとする。

(いい角度に傾け! 間に合え!!)
わずかの時間の間だったが、
エル・マタドーラは、必死で念じた。

画像


「なっ!? バ、バカな!?」
ドラえもんは、目の前の現象に仰天した。

まるで、ウォータースライダーで滑り出したかの様に、
地面に倒れようとしている
ひらりマントにより、
エル・マタドーラの体は、地面に激突することなく、
空中へ投げ出されたからである。

胴体着陸する飛行機のごとく、
エル・マタドーラは、背中を地面につけて、
数メートル程、地面を穿ちながらも、停めたのである。

画像


「ひらりマントをあの様に使うなんて」
ドラえもんは、呆然としていた。

「僕は、闘牛士なのだ。
この様な技術も使えないで、毎日、獰猛な猛牛相手に、
命がけで闘えたとでも思っているのか」
エル・マタドーラは立ち上がる。

「フフフ、ただの青いタヌキだと思っていたら、恐ろしい投げ技を
使うじゃないか 幸いにも、致命傷だけは避けられたが、全くの
ノーダメージとはいかなかったよ」

エル・マタドーラは笑ってはいたが、
息は少し荒くなっていた。

地面を穿った際の摩擦と衝撃によるものだろう
上着の背中部分は、大きく破れ、
エル・マタドーラの背中に、決して軽視できない
ダメージがあらわれていた。

エル・マタドーラは、ひらりマントに近づく。

ドラえもんに、それを止めない。
いや、止められなかった。

エル・マタドーラの攻撃と
先程の投げ技で、気力と体力が、尽きかけていたからだ。

そんな2人の上空に、偵察用の小型ロボットが飛んでいる。

その小型ロボットを通して、2人の闘いをみているのは、
もちろんビッグ・ザ・ドラである。

「まぁ、最初から奴には、期待などしてはいないが、
戦いのベクトルが相変わらずズレまくっているな」

ビッグ・ザ・ドラは、苦い顔をした。

「やはり、ビッグ・ザ・ドラ様のチップを用いても、
奴の闘牛への思いは御せないみたいですな」
側近は、表面には、決してださないが、
内心では、ビッグ・ザ・ドラ同様、苦々しく思っていた。

「奴は、ファイターとして、敵を倒すかなどと全く考えていない

闘牛士として、自分がどう闘うか
あるいは、自分は誰もが認める勇敢で誇り高い闘牛士で
なければならないということしか考えていない

無自覚なのだろうが、
闘っている相手を、敵としてみていない 
せいぜい、奴からすれば、自分の闘いを盛り上げる
オブジェクト程度しかない

だからなのだろう
敵を闘いの最中に称賛する。
バックハンドブローがヒットさせた後、
絶好のチャンスなのに、追撃しない
ブラックベルトを身につけている奴を投げ返そうとする。」

ビッグ・ザ・ドラは、ますます苦い顔をする。

「俺ならば、自分の闘いの為に敵など称賛はしない。
自分から絶好のチャンスをふいにしない 一気にケリをつける。
ブラックベルトを身につけている奴に、投げ技で
対抗などしない。 一旦、敵の負傷箇所を攻撃するとかして、
どうにかして距離をとってから攻撃する。」

ビッグ・ザ・ドラは、苦みとも哀れみともつかぬ様な顔になる。

「もっとも、あのエル・マタドーラが、闘牛士であろうとすることに
俺のチップをもってしても御せない程、
固執するのも無理はないかもしれないな

あの付き人のスタントから聞いた話によると、
奴の、闘牛士としてのスキルは、平均より少し上程度だが、
故国では、奴の闘牛士としての人気は高かった。

エル・マタドーラは、
闘牛士であることに誰よりも誇りをもっていた。 

誰もが認める闘牛士を目指し続けることが
奴の唯一無二の生き甲斐でもあった。 

さらに言えば、闘牛士こそが、
奴にとって、唯一無二の居場所だった。

だが、いつの世にも
いたずらに、不必要に、
敵を作って、粗悪な正義の酒に
酔いたがる馬鹿な人間達がいるものよ」

「奴の故国で、闘牛は、牛を倒していることをショーにしている。
牛が可哀想だ。 闘牛を国からなくそうという運動が起きました。
いわゆる、闘牛バッシングというものですかな」

「俺からすれば、アホなバッシングさ

牛が可哀想だというが、
闘牛で、獰猛な猛牛に、果敢に立ち向かい、
下手すれば、命を落としている闘牛士達は
可哀想じゃないのか 

あるいは、闘牛士達は、牛をいじめる為に、
自分の精神を研ぎ澄ませる等、
何やかんやでもしているとでも思っているのか

はたまた、闘牛士達は、自分の行動は、
命を落とす危険がついてまわっている闘いであることを
認識していないとでもいうのかという疑問があるが、

そのバッシングをしている人間達には、
決して思い浮かばない疑問であるらしい」
ビッグ・ザ・ドラは、蔑んだ様な表情になる。

「エル・マタドーラをはじめとする闘牛士達は、その対抗手段として、
バッシングする者達に、闘牛を何とか理解してもらおうと
色々と講じました。 だが、そんな疑問すら思い浮かばない連中には、
所詮は、馬の耳に念仏でしたな。 結局、エル・マタドーラは、
故国で闘牛ができなくなりました。 そこで、最後の手段として、
エル・マタドーラは、過去の時代へタイムスリップして、
闘牛士として生活しよう考えました」

「だが、その手段も使えなかった
何せ、そのバッシングしている連中の中には、
タイムパトロールの人間も結構いたからな
しかも、その中には、タイムパトロールの上層部の者もいた」

ビッグ・ザ・ドラは、冷笑をうかべる。

「それにしても、タイムパトロールが中止させた際に、
世間に公表した言葉には、さすがに、笑ったよ」

「確か、過去の時代にいって、牛をいじめようとする
ロボットの愚行を止めた。 偉大な祖先たちも、
我等の行動を必ず褒めてくれる。 我らの行動は、
どの時代の者達がみても、素晴らしい行動だと言っていましたな」

「自由だの、博愛だの、平等だのが、当然だと認識できる時代もあれば、
強いことこそが正義だと当然だと認識できる時代もあったのだ。 
つまり、時代によって正しいことの基準など、ころころ変わるのだ。 
どの時代の全ての者達が、現代の者と同じ認識をもつことなどあり得ない 

タイムパトロールならではの傲慢でもあり、
自分を正当化するために、自分達の祖先を自分の都合のいい様に
解釈する愚かな考えでもあるからな。 
奴等は、そんなことを認識もせずに、あんなことを言っているのだと
笑わざるを得なかったよ」

「そのバッシングで、エル・マタドーラは
闘牛士としての居場所をなくしました。
避けて逃れる様に、このイージーホールのスペインに
付き人のイヌ型ロボットのスタントと共に流れ着いたのでしたな」

「そうだな 闘牛士としては、ともかく
奴の回避能力とひらりマントの技術だけは、
他のドラドラ7と比べて、はるかに秀でていた。 

その技術に対して、正攻法で、闘えば、
この俺ですら、いささか手間取るレベルだろう。

だからこそ、このイージーホールでなら、好きなだけ闘牛ができるとか
適当なことを言って、容易く俺の傀儡とした時は、まぁまぁ
お得な買い物でもしたと思ったが」

ビッグ・ザ・ドラは、苦い顔をした。

「ビッグ・ザ・ドラ様のチップをもってしても、
奴を完全に、コントロールできず、奴の闘牛に対する思いを
ますますヒートアップさせただけでしたな」

「俺の命令を、半ば無視して勝手な行動をしはじめた。
もっとも、その行動は、
俺からすれば、何のマイナスにもならない ついでに言えば、
何のプラスにもならないので、放置しているが、
二律背反とでもいうべきなのか訳のわからない行動だな

仕返しなのだろうが、
イージーホールのスペインのチャンピオンシップの街に、
自分の居場所を奪った闘牛バッシングの連中をおびき寄せて
闘技場に無理やり参加させて、痛めつけているのかと思いきや、

そんな奴らを、軟禁も同然の扱いをして、
闘牛のすばらしさをみせて、理解させるだとか言って、闘技場に
観客として無理やり参加させている。

見てみろよ、あの観客どもの様子を

まぁ、人間とやらの当然の心理と言えば、当然の心理なのだが
そもそもの原因が、自分達の行動にもあるのに、
只々、理不尽なことをされて不平不満たらたらといった顔つきだな

もしかしたら、あのタヌキが、運よくテメェ達を解放してくれるかも
しれないと思ったからなのだろう

闘いの前に、観客どもは、あのタヌキに、
エル・マタドーラは、弱い者いじめをしている悪い奴なので
困っていると、自分達の非を認めもせずに、泣きついていたらしいな。

それならば、せいぜい、
声援のひとつでも、くれてやりゃいいものを
それすらしない。 

まぁ、絶対に正しいテメェ達が泣きついたのだから、
助けてもらって、当然だと思っているのだろう。

これも、人間とやらの当然の心理と言えば、
当然の心理なのかもしれないが、
あれでは、タヌキが負けでもすれば、役立たず、ポンコツだと
言って唾でも吐きかけるだろうよ」

ビッグ・ザ・ドラは、冷笑をうかべる。

「まぁ、ともかく、あのタヌキは、もはや、風前の灯火も同然、
エル・マタドーラの勝利は動かないかと」

「それは、どうかな。」

ビッグ・ザ・ドラは、ひらりマントを拾い上げる
エル・マタドーラの背中をみる。

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