『ドラえもん 友情伝説 ザ・ドラえもんズ 番外編』 その15

6月3日

(15)親友達の命運を護る

「待たせたね」
闘技場のグラウンドにのび太が立つ

「3日前に経絡突きをくらったのに、
逃げずに、あらわれたか それだけは心から誉めてやるか」

エル・マタドーラは傲岸である。

「ヘッ、こちとら必勝の策があるからね!」
のび太はズボンのポケットから
空気ピストルをとりだし、右手の人差し指に装着する。

「フッ、必勝の策? 冷や汗がでているが」

「冷や汗じゃないさ 暑いから汗をかいているのさ」

「まぁいい、とっとと、かかってこい」
エル・マタドーラが右手を挙げる。

それは、試合再開の合図だ

エル・マタドーラが右手をさげる瞬間、
空気ピストルの発砲音が響いた。

のび太が、エル・マタドーラの眉間を狙って
空気ピストルを発砲したのだ。

だが、空気の弾は、エル・マタドーラの眉間ではなく、
闘技場の壁にあたった。

エル・マタドーラが、右にダッシュで移動することで
空気の弾を避けたからである。

エル・マタドーラの傲岸な表情が一変して、真剣な表情になっている。

エル・マタドーラのダッシュの移動がおわろうとする瞬間、
のび太は、左のポケットに左手をいれて、
すぐに、ポケットから左手をだした。

左手の人差し指には、空気ピストルが装着されていた。

その一連の動作は、1秒もかかっていない

再び、空気ピストルの発砲音が響く。

空気の弾は、まるで吸い込まれるがごとく、
エル・マタドーラの眉間めがけて飛ぶ

(当たれ! 当たってくれ!)

だが、空気の弾は、再びエル・マタドーラの眉間に命中しなかった。

あと数cmのところで、エル・マタドーラが、ひらりマントを
ボクシングのアッパーの様に、振り上げたのである。

ひらりマントによって、はじかれた空気の弾は、そのまま、のび太の眉間めがけて
飛んできた。

「うおおっ!!」
とっさに、のび太は、しゃがみ込むことで、空気の弾をかわした。

空気の弾は、再び、闘技場の壁にあたった。

「驚いた 抜き撃ちの速さ、射撃の正確性、
僕が、行動がおわった瞬間を狙うタイミング、

ドラ・ザ・キッド以外にも、超一級といっても差し支えないぐらい
射撃が上手い者がいるとは」

(まんまと、はじき返しといて、ぬけぬけと…)
のび太は、エル・マタドーラの技量に、こわばっている。

「でも、この射撃が、お前の必勝の策とやらではないのだろう?」
エル・マタドーラは、笑っている(しかし、目は笑っていないが)

「あ、当たり前だよ! スゲェ策だぞ!」

「フッ、スゲェ策か…
まぁ、その策とやらも、既に、おおよその検討はついているけどね
とっとと、その策とやらを実行したほうがいいかもね」
エル・マタドーラは、馬鹿にした様に、笑っている
(しかし、その構えには、驕りはないが)

「ふんっ! よ、よけいなお世話だよ!」
のび太は、空気ピストルを連射した。

やけになって、連射はしていない。

空気ピストルでも、確実にダメージを与えないといけなかった。

だからこそ、エル・マタドーラの急所を狙って連射していた。

(こんな状態だけど、僕の狙いは、正確なはずだ。
抜き撃ちの速度と精度も、いつもの調子だ。 それなのに!?) 

のび太の連射をエル・マタドーラは、フットワークと
ひらりマントを巧みに使って避けている。

(ドラえもんとの闘いの時もそうだった。
名刀電工丸の連続攻撃も、きちんと対処していた。
単純に、スピードが速いとか、ひらりマントの使い方が上手だとか
言い表せるものじゃない。 上手く言えないけど、
エル・マタドーラの闘い方は、
今までの相手とは、どこか異なる気がしてならない)

「これが、本当に小僧の射撃の技術なのかとは信じがたい。
さっきのタヌキの名刀電工丸の連続攻撃よりも、攻撃の正確さは、優れている。 
寸分のズレもなく、僕の急所に弾がとんでくる」

寸分のくるいもなく眉間に飛んで来た空気の弾を
エル・マタドーラは、しゃがんでかわす。

「射撃の動作も、凡俗の者では到底対処できない程、素早い 
もし、射撃を要する業界で研鑽を積み続ければ、スピードと正確性において、
ドラ・ザ・キッドを上回って、22世紀でもトップクラスの射撃の名手になるのも、
大した時間はかからないだろう。」

のび太は、しゃがんだエル・マタドーラの両足に照準をあわせて、
左右の人差し指に装着した空気ピストルを発砲する。

「でも、お前の射撃は、さっきのタヌキの攻撃以上だが、
それに、反比例でもするかの如く、お人好しすぎる」
エル・マタドーラは、まるでマントでも羽織るかのように
ひらりマントを持ちつつ、前方に鋭角、
およそ45度前後の角度で、ジャンプして、
空気の弾をかわす。

最高速度が129.3kmにも達する
ネコ型ロボットのジャンプ力である。

のび太が照準を合わせるよりも
わずかに早く
約2m前後の高さに達した。

「攻撃のパターンが正攻法すぎて、狙う箇所が、正確すぎるから、
避けやすい」

のび太が、空気ピストルを連射するよりも
ほんのわずかに早く、
エル・マタドーラは、体を半回転させてのび太を
めがけて落下する。

その為、連射した空気の弾は、ことごとく、ひらりマントにより
かわされる。

ひらりマントを左手に持ちつつ、
背中から落下するエル・マタドーラを
のび太は、かわそうとするが
もう一度、半回転する
重量が129.3Kgのネコ型ロボットの
落下するスピードは、のび太の想像以上だった。

まともに、エル・マタドーラの体が、のび太にぶつかった。

画像


さらに、129.3Kgの重量を支える事などできるわけがなく、
のび太は、仰向けに、ぶっ倒れた。

背中に、息ができないと思えてしまう様な衝撃が、爆ぜたが、
後頭部をぶつけることだけを避けられたのが、せめての幸いだった。

(コイツ、やはりな・・・)
のび太の体に、自分の体をぶつけた時の感触が、
予測していた通りの感触であると確認しながらも、
エル・マタドーラは起き上がり、
のび太の腹の上に、馬乗りする様な形になった。

「重量が129.3Kgの僕に馬乗りにされれば、
非力なメガネザルに、押し返すことはできまい!」

エル・マタドーラは、上体を傾けて右のパンチの連打を繰り出す。

のび太が、とっさに両腕でガードしたので、
顔面にパンチがヒットすることはさけることはできた。

「フッ、パンチはガードできても、このまま、連打により
腕にダメージが蓄積されてしまえば、ガードできなくなって
お前にパンチの連打をあびせられることができる。
どのみち、僕の勝利はうごかないな」

(お、思った以上に、パンチが重いよ、これは 両腕がジーンと痛いよ) 

のび太は、涙目になりかける。

(でも、これは、街で、ジャイアンと喧嘩しているわけじゃない
ドラえもんとその親友達の命運がかかっている闘いだ。
負けてもいい闘いなどではない! 親友達の命運を護る闘いだ!)

のび太は、闘志が萎えるのをとめる。

(どうする? 左でガードして、右で攻撃…
いや、ダメだ!  右で、攻撃しても、左手のひらりマントで
いなされてしまうよ いや、まてよ!?)

のび太は、とっさに両腕をひろげて、ガードを解いた。

「なんだ、もう試合放棄か」

エル・マタドーラは、右のパンチを、
のび太のがら空きの左頬へ繰り出す。

それと同時に、のび太は、左腕を、
エル・マタドーラの上体を抱え込むように、伸ばす。

闘技場に、一つの打撃音が聞こえた。

「ぐぅぅ…」
エル・マタドーラの顔が、苦痛にゆがんで、汗をかいて、唸っている。

右のパンチは、のび太の左頬の数ミリメートル手前で止まっている。

のび太の左拳が、エル・マタドーラの負傷した背中にヒットしている。

ほんのわずか、何十分の1秒の差だったが、
のび太の攻撃が、エル・マタドーラの攻撃よりもはやくヒットしたのである。

「体重が129.3kgでも、身長が129.3cmじゃ、
僕が手を伸ばして、君の負傷した背中を叩くのはたやすい!」

のび太は、ドラえもんとの闘いで、負傷したエル・マタドーラの背中を
もう一度、あらん限りの力で叩いた

画像


「ぐぅ!!」
エル・マタドーラの顔が、さらに苦痛に歪む。
動きが鈍る。


のび太は、右手の空気ピストルの照準をエル・マタドーラの眉間に
あわせる。

(闘牛士たる者が、メガネザルに眉間を撃たれたまるものか!!)

空気ピストルが、発射された。

だが、空気の弾は、上空へ飛ぶのみだった。

エル・マタドーラが、瞬時に、腰を浮かせて、立ち上がり、左足を
うかせてしまうぐらい、上体を、のけぞらせることで、空気の弾を
かわしたのである。

(かわされたけど、これで、動ける!)

のび太は、あらん限りの力で、上体を左にひねりながら、
エル・マタドーラに、自分の体をぶつける様に、起き上がった。

間一髪で、空気の弾をよけることができたものの、上体をのけぞらせ
左足がういてしまっているので、バランスが悪くなっている
エル・マタドーラは、右にひねられるように、転倒して、
負傷した背中を地面にうちつけられてしまう。

「これで、ポジションを逆転させることができたよ」
のび太は、上体を起こした。

(バカめ 格闘技をしていない者が、
安易にマウントポジションをとるから、
ポジションを逆転されてしまうのだ)
ビッグ・ザ・ドラは、苦い顔をした。

「今度こそ!!」
のび太は、エル・マタドーラの眉間に照準をあわせようとする

(でも、人間共の特有の勇み足なのか、はたまた、意地や思いの空回りなのか
一旦、距離をとればいいのに、小童も眉間への攻撃に固執しすぎて、
ポジションを入れかえる事はできても、ガードポジションをとられているか)

のび太は、照準をあわせようとする。
だが、ポジションを入れ替えられても、とっさに、

エル・マタドーラは、両足で、のび太の腰をはさんで、

自分の腰を右へ、左へと、ひねって、
のび太の照準をずらそうとする。

「くそっ、このッ! 照準が!」

エル・マタドーラが腰をひねる度で、両足で腰をはさまれた
のび太は、上体がぐらつき、照準があわせられない。

「フッ、どうした やたらと僕の眉間ばかりに攻撃しようとするが、
短期決戦でもしなければならない理由でもあるのか」
のび太の攻撃で、息が荒くなり、汗をうかべていながらも
エル・マタドーラは笑う。

「スゲェ策があるから、理由なんかないよ!」

のび太は、否定するが、
エル・マタドーラも、のび太が眉間への攻撃に固執していることを
見抜いた。

「そう言えば、タヌキを助けたみたいに、魔法の風とやらを
使えば、僕に馬乗りされて、パンチの連打をカードする手間は
省けたのに、なぜだ? その能力は使用できないのかな?」
エル・マタドーラは、笑う

「うるさい! よくもまぁ! 闘いの最中に、ぺらぺらと!
足で僕の腹をはさんで、僕の上体をぐらつかせても、
必ず、君の眉間に、あててやる!」

のび太の息が荒くなりはじめている。

「フッ! お前は、攻撃だけでなく、言動も、お人好しすぎるな。
答えないということは、自分は、なんらかの理由があって、
能力が使えないと相手に告げているのも同じだぞ」

エル・マタドーラは、笑っている。

「やかましい!」
のび太は、何としても、エル・マタドーラの眉間に空気の弾を
当てようとする

(人間の小童よ エル・マタドーラの相手に、
一つの攻撃に固執しない方がいいな
エル・マタドーラは、ファイターのスタンスを持っていない、
オフェンスのレベルも未熟すぎる。 だが、後手をとられても、
相手の攻撃を制して、先手を取りかえすというディフェンスだけは
超一級だからな)
ビッグ・ザ・ドラは、自分のヒゲをさわる。

「まぁ、僕は闘牛士だ 
そんなメガネザルに、正直に答えてあげよう
何も、眉間を撃たれるのを防ぐ為だけに、
お前の腰を足で、はさんでいるわけじゃない
この攻撃を、確実に、お前にあてるためでもある」

エル・マタドーラの左手で、持ち上げた
ひらりマントが、宝石の様に輝いている。

(これは!? やばっ!?)
のび太が、とっさに逃げようとした。

だが、重量129.3kgのネコ型ロボットに、
両足で、腰をはさまれているので、
逃げられるどころか、全くと言っていい程、動けなかった。

「空気ピストルでは、先程よりは、威力は格段におちるが、
メガネザルに、致命の一撃をあたえるには、十分か!」
エル・マタドーラは、ひらりマントをふった。

野球の使用される硬球程度の大きさのエネルギー弾が、
のび太の右のわき腹辺り、
3日前に、経絡突きをくらった部分へめがけてとんできた。

腕でカードしようとしたが、間に合わなかった。

経絡突きをくらった部分に、エネルギー弾が命中した。

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