『ドラえもん 友情伝説 ザ・ドラえもんズ 番外編』 その16

9月2日

(16)フルスイングの決意

のび太の3日前に、
経絡突きをくらった部分に、
エル・マタドーラのエネルギー弾が命中した。

命中した部分から痛みが一気にひろがり、
一瞬だが、のび太は、窒息する様な感覚におそわれた。

意識はうしなっていないが、動きがとまってしまう。

「やはり、しとめられないか! それならば!」
エル・マタドーラは、攻撃の手を緩めない。

ネコ型ロボットの全身の機能を活かして、
のび太の腰を両足で挟んだまま、逆立ちの体勢をとり、

両足でのび太をぶん投げた。

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痛みで、動きがとまってしまっている
のび太は、受け身もとることもできずに、
まともに、地面へダイブして、
顔面を地面に、打ちつけられた。

エル・マタドーラは、逆立ちの体勢をとき、
うつ伏せになって倒れるのび太に、向き直る。

(まだ、このメガネザルはノックアウトされていない。
コイツは、友情とやらの為に、立ち上がる)

その様に、思うが、エル・マタドーラは、追撃をしない。
例えビッグ・ザ・ドラの傀儡となっても、
闘牛士たる自分が倒れた敵を攻撃しないという矜持はある。

だが、今は、何よりも、
背中のダメージを、もはや無視などできない。
追撃よりも回復を優先したかったのだ

のび太は、顔面が
ダメージをうけて、土まみれになりながらも、
体の向きを変えて、仰向けになる。

先程のエネルギー弾をくらった箇所が、熱くて痛い。
息が荒い。 とっとと、まいりましたと言いたい。
だが、倒れるわけにはいかない。

のび太は、右のわき腹を押さえながら、上体を起こす。
だが、立ち上がらない。

ボクシングで言うところの、カウントぎりぎりまで、
ダメージの回復をはかってから、立ち上がる作戦を
とることにしたのである。

無論、この闘いは、ボクシングではないので、
カウントなどない。

別に、エル・マタドーラが、
ダウンしたのび太を攻撃しても
ルール違反になどならないが、

ドラえもんとの戦いをみて
エル・マタドーラが、倒れた相手を攻撃しないことを
のび太は、わかっている。

ダメージ回復をはかりながら、
のび太は、のび太なりに、必死で頭を回転させる。

(偉そうで、キザで、魔法を知らない。 拳法を知らない。 射撃を知らない

エル・マタドーラは、
そんな奴だが、マジで掛け値なしに強い)

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のび太は、まずは、呼吸を整える。

(その強さは、スピードが速いとか、
ひらりマントの使い方がとても上手だとかいった単純なものじゃない
エル・マタドーラの強さの特徴は、
相手に先手をとられても、相手の攻撃のパターンやリズムを把握して、
攻守を逆転させることに、とてつもなく秀でていることだ。)

のび太は、頭を回転させる。
かつて、両親に塾で勉強させられるのを回避したとき以上に

(ドラえもんの電工丸での攻撃
剣の技術のスキルでは、ドラえもんは、上回っていたが、
攻撃パターンは、把握されていた。
僕の射撃もそうだった。 僕の照準を定めるまでの時間、
空気ピストルを構えるまでの速さ、空気ピストルの空気の弾の秒速、
僕の射撃の過程とリズムを完全に把握されていた。
だから、ドラえもんも僕も、エル・マタドーラを追いつめても、
結局は、逆転されてしまった。)

のび太は、ラオチュウの下で、学んだ
一番簡単なカンフーの呼吸法で呼吸をより安定させながら、
頭を回転させる。

(このまま、空気ピストルでの攻撃を続けても、
いや、過程とリズムを把握されてしまった僕の射撃の技では、
エル・マタドーラ相手に、はっきり言って意味はない
でも、僕自身には、射撃以外に何もない
それならば、どうすればいい…)

のび太は、数秒程してから立ち上がる。

「ほぅ、何の策はないのに、立ち上がるか」
エル・マタドーラは、立ち上がるのび太をみても、構えない。

のび太が、攻撃にでないことをわかっているからだ。
その証拠に、のび太は構えていない。

「君の言う通りだよ 
僕には、最初からスゲェ策などない。
あれは、ドラえもんを安心させる為に、ついた嘘さ

ああでも言わなければ、ドラえもんのことだ。
あんな重傷をおっても、君一人では頼りにならないとか言い出して
闘い続けるとか言い出すからね

それに、何とか、この様に、闘いに参加できたとはいえ、
3日前の君の経絡突きによるダメージの影響で、
能力いただきリングで得たドラメッドⅢ世の能力も、ドラえもんを
助けた時に、使い果たしてしまったよ」

のび太は、両手の人差し指に装備している空気ピストルを外して
ポケットの中にいれた。

「エル・マタドーラ、君は、マジで、強いな 
ドラ・ザ・キッド、王ドラ、ドラメッドⅢ世、
彼等と比べても、強さに遜色もない」

のび太は、エル・マタドーラのいる方向とは違う方向へ歩き出す。
だが、決して試合放棄などではないことは、
エル・マタドーラには、わかっている。

のび太の歩く先には、ドラえもんが、エル・マタドーラの攻撃で
落とした名刀電工丸があるからだ。

「今までの冒険等で、色々な敵をみたが、君の様に、先手をとられても、
相手の攻撃のパターンやリズムを把握して、攻守を逆転させて闘う
タイプは、はじめてだよ」
のび太は、名刀電工丸の前にしゃがみ込んだ。

「ほぅ、メガネザルのくせに、僕の闘い方の本質を見抜いたか・・・」

「そんなタイプに対して、魔法や拳法、射撃を使わないからと、
侮っているつもりはなかったけど、心のどこかで侮っていた。

ドラえもんが、倒れても、何の策がなくても、僕のコンディションが
ベストでなくても、あきらめない心で頑張れば、
僕の射撃で倒せると思っていた。

ついでに言えば、
頑張って、いつも世話になっているドラえもんの友情にも報いることも
できるなんてことも思っていた。

だが、君を相手に、そんな考えそのものが、あまりにも甘すぎた」

「メガネザルに、侮られるのは、腹が立つが
今更ながら、理解できたのかな、
この僕の強さが」

「僕の射撃のリズムが把握されてしまっている以上、
射撃では闘えない」
のび太は、トレードマークというべき黄色のシャツ、
先程のエネルギー弾で、ボロボロになった箇所を
破り取った。

「それで、どうするのかな?」

「親友であるドラえもんには、ものすごく悪いと思う
でも、この闘いに関してだけは、友情は、考えない!
なりふり構わず、フルスイングで、
君を討つことだけを考える!」

のび太は、エル・マタドーラに向き直った。

のび太の右手には、名刀電工丸が握られていた。
しかも、破り取った服のきれはしで、刀の柄の下の部分と
右手をぐるぐる巻きにしていた。

「どんな攻撃をくらっても、何が何でも、
自分は、刀を落とさない、
必ず敵を討つという決意の表明か
メガネザルが、いっぱしのサムライにでもなったかな」
エル・マタドーラは、笑いながら構える。

「でもなぁ、あのタヌキとの闘いをみているなら、
名刀電工丸の攻撃のリズムとパターンを、
僕が完全に把握していることぐらいは、お前でも理解できるだろう」

エル・マタドーラの目が笑っている。

「そんなことは、この闘いに関係ない! 僕は使用できる
この最後の手段で、君を討つ! それだけさ」

のび太の目に、かつてウソ800(エイトオーオー)を飲んだ時以上の
覚悟と決意みたいなものが宿っていた。

闘技場の観客達、
エル・マタドーラに軟禁も同然の状態で
連れてこられた闘牛バッシングの者達、

「ああ、このメガネザルも、これで終わりか 冴えない見かけ同様
コイツも使えない奴だったな」 

観客の誰もが、口に出さなくても、そんな思いが表情にでていた。

エル・マタドーラのセコンド、
犬型ロボットのスタントは、驚いていた。

エル・マタドーラの目が笑っていることに、

闘牛における真剣勝負の意味を理解して、

闘牛士として、脂が乗ってきてからは、

いかなる闘いにおいても、
目だけは、笑うことのなかったエル・マタドーラが

駆け出しの闘牛士だった頃の様に、
とりあえず、何か闘牛が楽しかった頃の様に、
目が笑っている。

(何か胸騒ぎがするぞ! 僕はロボットなのに、胸騒ぎするぞ!)
スタントは固唾を呑んでいた

エル・マタドーラ当人は、自分の目が笑っている自覚はなかった。

名刀電工丸のパターンとリズムを把握しているからと言っても、
背中のダメージを考えれば、決して油断などしない。
決してのび太を侮っていない。

(少しは回復したが、これ以上のダメージは負うことはできない
コイツも、あのタヌキ同様、ウィークポイントを的確に狙って
弱らせてから、パワーチャージアタックで、確実に討つ!)

のび太も、自分のダメージを考える。
(ほんの少しだけ回復したが、やっぱり、右のわき腹が熱くて痛い…
ついでに言えば、体が、ちょっとやばいくらいに、熱っぽい・・・
この攻撃が、僕にできる最後の攻撃だろう。
それならば、逡巡なんかしない。 
ただひたすら、討つ為に、フルスイングし続けるのみ)

のび太当人は、全く気付いていないが、頭につけた能力いただきリングが、
ほんの一瞬だが、にぶく光った。

野比のび太とエル・マタドーラ
両者の最後の攻防がはじまろうとしていた。

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