『ドラえもん 友情伝説 ザ・ドラえもんズ 番外編』 その18

10月24日

(18)エル・マタドーラの務め

名刀電工丸で、体を貫かれ、戦闘不能と思われた
エル・マタドーラの
だらりと下がった両腕が動き出す。

(そ、そんな!? これでも倒せないのか!?)
意識が朦朧としていながらも、のび太は驚愕する

エル・マタドーラの両手が、
のび太の両肘をつかんだ。

「…見事だったよ、のび太君、
刀の柄をつかむことで、名刀電工丸の
動きを封じたつもりだったのに、
まさか…柄から刀身を取り外すとは…」

エル・マタドーラは、両腕をゆっくりと上げる

もともと、刀身に柄をはめ込んでいるだけで、
精根尽き果てて、闘う力など微塵もない

のび太が、両手でつかんでいる柄は、
刀身からあっさりと引き抜かれた。

「およそ1ラウンドにも満たない時間だったが、
最期の攻防において、君の攻撃の気迫に戦慄しつつも、
いつの間にか、過度に、わくわくしていた… 

駆け出しの闘牛士だった頃の様に、
過度に喜びを感じ得ずにはいられない自分がいたよ…」

のび太の両肘を持ち上げつつ、エル・マタドーラは、

右膝をあげて、
かがんでいた上体を、ゆっくりと起こす
しかし、顔はうつむいたままだ。

(駄目だ… もはや、勝ち目などない…
今の僕では、軽い蹴りのひとつでも、ノックアウトだ)

のび太は観念した。

「止めろ! エル・マタドーラ!!」

その時、ドラえもんの声が聞こえた。

のび太は、ゆっくりと声のする方向へ顔を向けた。

ドラえもんだった。

メカニック達により
ダメージの箇所に、ほどこされた
応急処置のおかげで、

かろうじて、自分で立って歩くことができるが、

両脇に立ってドラえもんを
みている2人のメカニックの
とても不安そうな表情から
まだまだ安静が必要な状態なのだと
のび太は、察することができた。

「まだ、これ以上、
闘うのならば、今度こそは、ボクの手で倒してやる!」
ドラえもんは、両者に近づく。

しかし、控え室からグラウンドまで歩くことができたとはいえ、
ダメージは全く回復などしていない。

やはり、途中で、ふらつき両膝を地につけてしまう。

「クッ、な、なんの・・・こ、これしき・・・」
ドラえもんは、立ち上がろうとする。

その様子に、闘うことなど到底できないので
無理をするなと叫びたいのび太だったが、
疲労困憊とケガによる熱で、ほとんど声もでなかった。

「あわてるな、ドラえもん もはや、さっきの一撃で、
僕には、闘う力などない それ以前に、君の親友と
闘う気などないさ」

エル・マタドーラの言葉に、
あらためて、ドラえもんとのび太は驚いた。

「も、もしや、キミは・・・」

「そうだよ、のび太君の一撃が、僕を悪のチップから
解き放ってくれた。 それは、とても嬉しいよ・・・
でも・・・」

エル・マタドーラは、顔をあげた。

その顔から、邪悪さは、消えていたが、
深い悲しみにとらわれて、涙で濡れていた。

「とてつもなく申し訳ないことを言うけど、
のび太君! なぜ、君は、友情を考えないと言っておきながら、
この僕に致命の一撃を与えなかった!?

なぜ、この僕に、闘牛士として
果てさせてくれなかったぁぁ!?」

エル・マタドーラは、子供の様に、声をあげて泣いた。

全く予想さえしていなかった相手の悲痛な言葉に、
ドラえもんとのび太は、愕然とした。

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「ど、ど、どういうこと!?
な、何を言っているの!?
事態が、よくわからないよ!?」

ドラえもんは、エル・マタドーラに問うが、
エル・マタドーラは、泣くだけだった。

「それについては、僕から説明させてもらいますよ」
エル・マタドーラのセコンド、
イヌ型ロボットのスタントだ。

スタントは、ドラえもんとのび太に話した。

闘牛バッシングにより、闘牛ができなくなり、
イージーホールに流れ着いたこと 

ビッグ・ザ・ドラという今回の騒動の張本人の口車に乗せられ、
悪のチップで操られていたこと

でも、いくら悪のチップで操られても、闘牛への情熱が冷めず、
また、闘牛バッシングを許すことができず、
闘牛バッシングの連中をこの闘技場へおびき寄せて、
軟禁状態して、痛めつけずにはいられなかったこと
もはや、闘牛士として果てることしか望まなくなっていたこと

スタントの話を聞き終えたドラえもんは、
まるで、思いっきり苦い飲み物で飲んで、
テンションが思いっきり下がった様な表情になって、
黙るだけだった。 

スタントは、沈痛な表情だった。

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ドラえもんは、子供の様に泣く親友に何も言えなかった。

闘牛バッシングの観客達に、
お前達のせいで、親友が
こんな暴挙をするはめになってしまったと
怒鳴ることもできなかった。

闘牛バッシングの連中の言うとおり、闘牛は牛をいじめていると
言われても仕方がない面があることを知っていたからだ。
また、ドラえもんは、石頭で堅物だったが、
親友の闘牛への思いを、決して理解できないわけではなかったからだ。

「・・・ド、ドラえもん・・・ スタント・・・ 
エ、エル・マタドーラ・・・
き、聞いてくれ・・・」
エル・マタドーラを哀しみの目で、みていた
のび太は、3人の名を呼んだ。

ダメージと疲労により、
その声は、常人では、聞き取れぬ程、か細いが、
ロボットならではの並外れた聴力をもつ
ネコ型ロボット、イヌ型ロボットの3人は、聞き取った。

スタントに肩をかしてもらいながら、
ドラえもんは、のび太に近づく。

エル・マタドーラは、自分の名が呼ばれ、
泣き止んで、のび太をみる。

「エル・マタドーラ・・・ ぼ、僕は・・・所詮は、少年だから・・・
た、大層なことは言えない・・・」
のび太は、ほんのわずかな気力をふりしぼる。

「でも、君は、信じられない程、強く、
とても闘牛が好きな闘牛士だ・・・
そんな君ならば・・・ できるよ・・・

闘牛を、バッシングなど、はいりこめない程、究めること・・・

あるいは・・・闘牛をバッシングの余地がない程・・・
進化させ、全く新しい闘牛を作るあげることを・・・」

「闘牛を究める・・・ 全く新しい闘牛を作る・・・」

エル・マタドーラとスタントは、天啓に導かれる様な
表情となりはじめる。

「伝統がある闘牛を本気で究める・・・ 進化させようとする親友を・・・
ドラドラ7の皆は・・・ 助力を惜しまず・・・ 友情でもって・・・
護ってくれるはず・・・ なぁ、そうだろう・・・ ドラえもん・・・」

「ああ、そうだよ この親友テレカに誓って、護るよ!
いつもは、どうしようもないくらい冴えないダメ少年の君が、
今日は、とても素晴らしく輝いてみえるよ!」
ドラえもんは、目に涙をうかべなから、力強く頷いた。

一言多いぞ、この青いタヌキがと言いたかったが、

のび太には、これ以上しゃべる気力もなかった。

「そうか、護ってくれるのか、親友よ

それならば、僕も、この親友テレカに誓って、
君達と共に、今回の騒動を治める為に、
ビッグ・ザ・ドラを倒した後は、
闘牛を究める、或いは闘牛を進化させることを

闘牛士エル・マタドーラの全うすべき務めとするよ!」

エル・マタドーラも、目に涙をうかべなから、力強く頷いた。

「闘いは終了した! あなた方は、解放されたのだ!」
スタントがドラえもんの右腕を挙げながら
声高らかに闘牛バッシングの観客達に告げた。

この時だけは、観客達は、歓声をあげた。
ただ、ビッグ・ザ・ドラの指摘通り、観客達のほとんどが、
絶対に正しい自分達が助けてもらうのは、至極当然だと
思っている様な連中ばかりなので、

ドラえもんとのび太に感謝の言葉を言う者はいなかった。
それどころか、観客達の歓声の中には
あのタヌキとメガネザルも、
迅速に早く助けられなかったのかという声も混じっていた。

非常に感動しているドラえもんとエル・マタドーラには、
その声は、全く聞こえていなかったが、
スタントは、その声を聞きとっていた。

その声に、スタントは、少し苦い顔をした。

ただ、スタントは、後になって知る事になるが、
この闘いの後、22世紀における闘牛バッシングが減少した。

はっきりとした原因は、わからないが、
ドラえもんとのび太が、偏った正義や憎しみではなく、結局は
友情の為に、ひたむきに闘い続けたことが

あの観客達の何人かには、
伝わったことが原因の一つなのだと
スタントは、信じて疑わなかった。

さて、話をもとに戻すと、

ドラえもんの状態に、
居ても立っても居られなかったのだろう

闘いが終了した同時に、
ドラえもんに応急処置をほどこした2人のメカニックが
すぐさま、ドラえもんを控え室に運ぶ為に、駆け寄る。

「メカニックの方々、まことにすまないが」
エル・マタドーラは駆け寄るメカニック達を呼び止める。

「スタントと共に、この僕に刺さった名刀電工丸をひきぬいてほしい。
こんな僕を救ってくれた礼として、僕達の手でこの偉大な親友達を
控え室まで運びたい。

このままでは、運びづらいから」

エル・マタドーラの頼みを了承した2人のメカニック達と
スタントは、名刀電工丸を引き抜く作業にはいった。

のび太が止めをさす為に、
突き刺したつもりでも、友情が、急所を
ぎりぎり外させていたので、引き抜く作業は、簡単だった。

応急処置をほどこされたエル・マタドーラは、
のび太を背負って、

スタントは、ドラえもんに肩をかして、
控え室へと向かった。

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まともに闘う力など残っていないほど、
傷つき、疲れていたが、
控え室へと向かうエル・マタドーラの顔は
とても晴れやかだった。

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イージーホールのロシア、スペイン、ブラジルで
同時に始まった3つの闘いの内、
2つが終了した。

のこる闘いは、あと一つ、
イージーホールのブラジル

王ドラ、ドラメッドⅢ世と
ドラリーニョとの闘いである。

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