『吼えろペン』について その4

9月23日

(6)炎尾 燃の執念 後編

炎尾 燃に、
過去に、少し世話になった編集者から、依頼がきた。

その内容とは、売り出し中の若手人気俳優が
出演する映画のキャンペーンとして、
その俳優の自伝を漫画として販売するので、

その自伝の漫画を描いてほしいとのことだった。

炎尾 燃のことだから、

おなじみの安請け合いで、引き受けるかと思いきや、
依頼を断るつもりだった。

なぜなら、いくら人気があるとはいえ、

その俳優は、まだまだ、若い

これから先の人生を、どの様に生きるのか、
まだまだ、わからない部分があるのだ。

自伝の漫画を描いたのはいいが、
その俳優が、何かをしでかした場合、俳優だけでなく、

自分の仕事にも、何らかの悪影響がでるのは確実だ。

いや、別に、俳優が、何かをしでかさなくても、
自分が何かと、しわ寄せを、くらう可能性は高い。

つまり、炎尾 燃からすれば、
デメリットやリスクが多い仕事なのだ。

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〔↑「吼えろペン」の編集者達〕

だが、編集者(※1)に、

(※1)『吼えろペン』には、
俳優の自伝を描いてくれと依頼してきた
編集者(イラスト左)の様に、

色々な編集者が登場する。

そんな編集者達の中で、ひときわ異彩を放つのが
炎尾 燃が連載を抱える月刊「シャイニング」の編集デスク、
仮面デスク(イラスト右)である。

この仮面デスク、本名は星 紅(ほし くれない)
いつも仮面をかぶっているので、仮面デスクと呼ばれている。

なぜ、仮面をつける様になったのか、
その経緯は、全くわからないが、漫画家の前では、
仮面はとらないことにしているらしい。

自他共に認める優秀な編集者なのだが
あまりにも、度が過ぎたアグレッシブな性格の為、

周囲に、とりわけ漫画家達に、
いらぬ苦労を、かけさせることもなくもない


「その俳優が、何かしでかしても、その時は続編を描けばいい

先生が、すばらしい自伝の漫画を描くことで、その俳優が
間違った道を進むことがない様に、プレッシャーを与えてやる

ある意味、自伝の漫画をとおして、先生が、
その俳優が、俳優として進めるように
教育するのですよ」といった意味合いのことを

言われたことが、炎尾 燃の熱血マンガ家魂を燃え上がらせた。

炎尾 燃は依頼を引き受けた。

だが、ゲームの雑誌展開用の漫画を描いても、

もとのゲームのキャラ設定を変えすぎて、
読者から顰蹙をかっていたこともある様なマンガ家である。

編集から俳優に関する資料を渡されても、

「はい、そうですか」と資料どおりに、描くわけなどなかった。

悪く言えば、「でっち上げ」が、色々と含まれた
俳優の自伝漫画を描きはじめた。

ノンフィクションであるべき自伝が、全くのフィクション
編集者も当然、大いに、驚いて困るばかりだ。

「俳優との対談で、本人に自分の制作に都合のいい
何かを喋らせるから」と

そんな編集者に対して、
炎尾 燃は、ある意味、平気だった。

だが、相手は、出版社の編集者ではなく、売り出し中の俳優、

さらに、相手が所属しているのは、
出版社ではなく、芸能プロダクション、

スケジュールが、びっしりとつまっているので、
(しかも、マンガ家の為に、
スケジュールの調整をしてくれることもなかったので)
対談することはできなかった。

また、渡してある資料で、
勝手に描いてほしいといわれる始末だった。

しかも、(正論といえば、正論だが)
大ウソの作りごとを描かないでほしいといわれた。

まさに、マンガを描くうえで、
重要な要素とも言うべきマンガ家の勢いすらも、

容赦なく叩きのめされるぐらいの
しわ寄せを炎尾 燃は、くらってしまった。

まさに、踏んだり蹴ったりで、
心が折れそうになる炎尾 燃、

「教育する側が、折れているばかりにはいかない」
熱血マンガ家魂を燃え上がらせ、漫画を描く炎尾 燃

だが、痛恨の一撃というべき事態が起きた。

その俳優が、
仲間と、やってはいけない薬をやったことで、緊急逮捕

そのうえ、そのことで、公開予定の映画も公開されなくなった。

マンガ家と出版社にとって、
「すべてが、終わった」とも言うべき事態だ

だが、このマンガ家の執念は、
そんな事態でも、燃えつきない

漫画を描いた。
しかも、主人公の名前を別の名前にした

さらに、編集者に言った。

「この漫画は、その俳優の自伝ではなく、
その俳優は、こうあるべきだというメッセージをこめた
痛快教育フィクションなので、
言ってみれば、何の関係もない」と

出版社側も、雑誌を盛り上げる為に、力を注いでいた
折角の企画が、台無しになっていたのだ。

しかも、編集者からみて、
炎尾 燃が描いた漫画自体も、
(やはり、俳優の自伝を描くという当初の企画意図から
はずれてはいたが)
テーマがしっかりしていて、面白い

まさに、台無しになった企画の穴埋めには、
これ以上ないくらい、うってつけだった。

編集者が、この漫画を出版社の人間と相談して、
掲載する方向に動いたことは、
言うまでもなかった。

まさに、踏んだり蹴ったりの状態になりながらも、

自分の漫画を描いてやるという炎尾 燃の執念からくる
行動が(一歩間違えれば、
世間の顰蹙をかう様な危険な行動でもあったが)

結局は、出版社の台無しになった企画を
救ったのである。

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