『ルイージに歴史あり』その35

8月30日

第二部(ルイージ 起死回生、そして決意)

第二章:『ミスターLの叫び』


(7)〔マリオVSエルガンダーZ〕後編


自分の精神の世界の中で、
ルイージは自分の腹を押さえ、うずくまっていた。

エルガンダーZのバックドロップで、
マリオが頭から落下する映像がみえた瞬間、

外の世界の衝撃音と共に、
ルイージは自分の腹に突如、まるで、とてつもない重みを伴った様な痛みが
発生したので、思わず、うずくまったのである。

みえた映像と自分の痛みから推測するに、
エルガンダーZのバックドロップは、
マリオを地面ではなく、ルイージの腹筋の上にたたきつけたのだと、
ルイージは瞬時に理解した。

(よ、よかった~ 僕の身体がクッションがわりになった事で
マリオ兄さんが、致命の一撃をさけることができて・・・)
うずくまりつつも、ルイージは安堵した。

「クソッ、俺としとした事が、せっかくの攻撃なのに、とんだドジを・・・」
エルガンダーZは身体の上下を元に戻し、すぐさま、マリオとの距離をとった。

マリオにさらなる攻撃をくわえようと思ったが、
冷静に闘いをすすめようと思ったからである。

例え、ルイージがクッションになったとしても、マリオには
確実にダメージを与えているはず、
闘いは自分に優位に進んでいるのだから

バックドロップをとかれたマリオはうつぶせに倒れた。

(大丈夫だ、マリオ兄さんは必ず立ち上がる)
ルイージは強く思った。

ルイージの予想通り、
マリオは自分の体をもちあげ、立ち上がる。

だが、マリオの様子がおかしかった。

立ち上がったが、ファイティングポーズもとらず、
まだ、頭が垂れている状態で何らかの病気の様に全身がふるえていた

(致命的なダメージをさけたとはいえ、脳震盪でもおこしたのか)
ルイージは頭にそんな考えが一瞬よぎった

だが、マリオが顔をあげた時、ルイージの考えは、一瞬でとんだ

マリオの表情は闘いの意志を表示していた。
だが、その顔色にはいつもの活力が欠片もなく、
まさに文字通りの顔面蒼白だった。

そして、よくよくみれば、マリオの全身は、震えだけでなく、
全身に汗がうかんでいた。

「クッ、ゆ、ゆ、油断したよ・・・そ、そ、その図体で、
ま、ま、ま、・・・・・ま、まさかの・・・ば、ばばば、バックドロップとは・・・
お、おかげでどうも、脳震盪でもおこしたのか・・・う、上手く、し、し、しゃべれないが・・・、
もう・・・そんな・・こ、ここ、攻撃はく、くく、くらわないからな・・・」
そんな状態でもマリオの闘志は萎えていないのだろう、マリオはエルガンダーZを
にらみつけた。

だが、本人に、その自覚はないのだろうか。
マリオのセリフ自体は強気だが、その全身の様子をみれば、
そのセリフは、単なる虚勢にしかきこえなかった。

(ま、マリオ兄さん・・・い、一体ど、どうしたの!?
やっぱり、あのバックドロップが効いたのか!?
でも、僕の身体がクッションになって、致命的なダメージは回避できたはず・・・
なのに・・・なぜ!?)
ルイージには、マリオにおきている出来事への答えはみつからなかった。

(さっきのバックドロップはマリオに致命の一撃にはならなかったはず・・・
なのに、なぜ!?・・・)
マリオとエルガンダーZの闘いをみている2人のギャラリーの1人も
マリオの状態におどろいていた。

(でも、あの異常な震えや表情といい、汗といい・・・もしかして・・・)
ギャラリーの一人にある考えがうかぶ。

マリオにおこっている異常事態は、
敵であるエルガンダーZにも、十二分にわかっていた。

「フヘヘヘヘヘ、致命傷にはならずにはすんだが、
どうやら俺のバックドロップがお前に効いているみたいだな 
せっかくの強がりも哀れなセリフにしかきこえないぞ」
エルガンダーZの声は、不敵な声に変わっていた。

「な、な、な、な、な、なめるなよ・・・」
マリオは攻撃をくわえようとエルガンダーZとの間合いをつめようとした

だが、エルガンダーZとの間合いをつめることができなかった。

別にエルガンダーZがバックステップをしたわけではなかった。

やはりというべきか、
マリオの両足が、ふるえて動かなかったのである。

「な、ななな、なんで!? 足がうごかない!?」
マリオは動けず震えている自分の足をみた。

「そもそも、な、な、な、な、なんで、無敵のヒーローの
僕はこれだけふるえ、せ、せ、せ、全身から汗をふきだしている!?」
マリオは自分の全身をみた

「ヒャハハハハー!! マリオよ、やはりお前は、ヒーローではなく、
やはり単なる傲慢かつ愚鈍な三流だなぁ~!!
そんな状態で身体では、まともな闘いすらできぬことは、誰がみても
あきらかだぁ~!!」
エルガンダーZはバックステップで、マリオの距離をひろげた。

再びエルガンダーZの口の部分がカプセルの様に開き、
再び、巨大な扇風機みたいなものがでてきた。

その瞬間、マリオの顔からかすかな強気が消えて、カッと目が見開かれた。

巨大な扇風機みたいな羽根がまわりはじめた。
その回転により、吸引のエネルギーが発生する。

回転のスピードが増すごとに、吸引のエネルギーが大きくなる。
まるで、それに比例するかのように、
マリオの顔が恐怖に歪み、全身から滝の様にあふれだす。
そして、全身が極寒にいるかの様に震えている。

吸引のエネルギーがマリオの周囲をかこむ、その瞬間!!

「ヒィィィィィィー!!! や、や、や、やめろぉー!!!
そ、そそ、そ、それをやめろぉー!!!」
マリオは、普段の彼からは
想像がつかぬほどの恐怖にみちた金切り声をあげた。


画像


マリオの叫びもむなしくというべきか、
エルガンダーZの巨大扇風機みたいなものの回転の速度が一気に急激にあがると同時に、
マリオを包み込んだ吸引のエネルギーは、マリオの身体をまるで、
掃除機に吸い込まれるごみの様に、エルガンダーZの開いている口の中まで、
一気に引き寄せ、エルガンダーZは口を閉じたのである。

マリオを吸い込んだエルガンダーZは足のブースターをふかせ、
一気に上空に上昇した。

そして、一体どういう仕組みいや、一体どういう物理法則がはたらいているのか。
エルガンダーZはふぐの様に、己の体を風船の様に膨らませた。

ふぐの様に体を膨らませたエルガンダーZは、
まるで、ガムか何かを咀嚼するかの様に、口の部分を動かす。
同時に例の扇風機みたいなものが回る様な音と、
何かと金属が強くぶつかる音、そして、そのぶつかる音がする度に『グエッ!』とか
『グアッ!』等のマリオのうめき声が聞こえた。


(ま、まるで昔の乾燥機みたいだ・・・)
ルイージには、エルガンダーZの中身はみえない。
でも、エルガンダーZの口の中でマリオに何が起きているのかは
どうにか想像はできた。

(あのエルガンダーZは、己の体を膨張させ、己の口を閉じることで、密閉空間を作り出す、
さらに、あの巨大な扇風機みたいなものが起こすエネルギーと、己の口の咀嚼で
マリオ兄さんの身体を鋼鉄である自分の口の中のあらゆる部分にぶつけている。
そして、その事で乾燥機が洗濯物を乾燥させる様に、マリオ兄さんから体力を奪い、
代わりにダメージを与え続けていく・・・)
ルイージはエルガンダーZの攻撃方法にゾッとした。

(こ、これはヤバイ、ヤバすぎるぞ、 あの病人の様なマリオ兄さんが、
あの攻撃をくらい続ければ、マリオ兄さんの敗北は確実、
下手をすれば、命を落としかねない!!
こ、これは何とかしないと!!)
ルイージは先ほどのミスターLの様に、エルガンダーZが映る映像の中へ
ジャンプして飛び込もうとした。

(何の確たる証拠はないが、あの映像の中に飛び込めば、
僕は現実世界に戻ることができるは・・・ずっ!?)
だが、あと10数cmで、映像に到達できるというところで、
ルイージの動きが止まった。

(ぬがあぁぁぁー!! こ、こ、これは!?)
ルイージの身体中に一旦はおさまっていた例の幾千の言葉がつよくうかびあがり、
ルイージの身体中に例の反響を起こしルイージの動きをとめたのである。

『なぜ、助けるのだ、長年、自分を苦しめていた元凶を倒せるのに』
『アイツが倒れれば、僕は単なる緑のオッサン扱いをうけずにすむ』

『そうだよ、アイツさえ倒れてくれれば、僕が僕らしく生きていける
理想の世界を築けるのだから、助ける必要なんかないよ』
ルイージの身体の中で、マリオを倒れてくれることを望む幾千の声が、
響き、ルイージは転げまわる。

「ヒャハハハハハハハー! 苦しめ! 苦しめ! 苦しめ! マリオ!
この俺が味わった20数年分の苦しみを味わいやがれー!」
自分の口の中でマリオをぶつける音をききながら、
まるで楽しくて仕方ないといった感じでエルガンダーZは笑い続けた。


「お、おい、やばいで! このままやとマリオの奴、完全におわってまうで!!」

「ああ、どうやら俺達が起つべき時がきらようだな」
ギャラリーの一人の表情に決意がやどった。

-(8)〔おかしな救世主参上!?〕へ続く-

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