『ルイージに歴史あり 外伝』その12

1月2日

第3章 〔スーパーマリオランド編〕

(7)地球への遠征

「ど、どうなっているのだ!? 俺が悪い夢でもみているのか!?」

「タタンガ様 これは、おそらく、この宝石が原因だと思われます。
それはともかく、コイツは、ショックから回復できていません
ここは、一か八か宇宙催眠をかけてみてはどうでしょうか?」
ロケトン8号が宝石を拾い上げる。

「宇宙催眠か 正直、こんな状態の奴にかけたことは
一度もないので、不安なのだが、一か八かやってみるか」

俺からすれば、
一か八かの賭けみたいな宇宙催眠だったが、
クイックは催眠状態になった。
ちなみに、運よく、俺の疲労度も少なかった。

最初は、なぜいきなり
青年から中年に変化したことを聞きだしたかったが、
とりあえずは、このクイックから、
計画の全貌を聞き出すことにした。

なぜか、クイックのしゃべり方が、
鼻につく喋りが、
大人しい喋り方に変化していたことが
気になったが、
聞き出した内容を
ロケトン7号に、まとめさせた。

大まかな内容は、一騎打ちの前に、
クイックが喋っていたことと同じだったが、
計画では、クイックは俺を倒した後、
連合軍の上層部及び議長達と合流する。
その後、すかさず、俺が宇宙催眠にかけた連中も
討ち取ってしまうつもりらしい。

その後、大々的に俺を倒したことを、報道する。

これが、なかなか業腹だが、
しかも、その報道でどうやら、
俺が宇宙催眠にかけた連中を倒した事や、
自分達の汚職も
俺のした事にして、俺を悪党に
仕立て上げるつもりだったらしい

その為に、議長達と連合軍の上層部は、
議長の屋敷がある惑星に密かに集まっているらしい。

他にも、集まっている連合軍の上層部の兵力等を
聞き出した後、俺は一番聞きだしたかったことを
クイックから聞くことにした。

なぜ、突然、青年から中年に変化したのかと

だが、クイックから聞いた答えは、
率直な感想を言えば、心情的に
聞かなければよかったと思える様な答えだった。

奴から聞いた答えを要約すると、
クイックは、もとは、40代半ばの
フォーム・アーミーの頭領の長男だった。

だが、この男の性格は、小心翼々で、
戦士には、到底向いていなかったので、
地方で、小学校教師をしていたらしい。

確かに、連合軍は小規模な勝利を幾度となくおさめたが
戦いは勝敗にかかわらず、必ず物資と金を消費するものだ。
また、戦いで命を落とす者もいる。

だんだんと戦う為の物資と人材、枯渇へむかっていく。

おそらく、いたずらに愛国心のある若造連中か
戦士こそが、何よりも偉いと思っている連中あたりが
言い出したのだろう。

頭領の一族は、国力がはるかに勝る敵に、
ひるむことなく皆が戦士として戦っている。
偉大なる頭領の長兄たる者が、戦おうとしないのは、何事なのかと

普通に考えれば、
軍人経験のない40代半ばの小心翼々の者に戦えと言うのは
無茶に過ぎなかった。 

だが、その無茶が、まかり通った。
クイックの頭にはめ込まれていた
この宝石のおかげで

クイックの説明によると、
この宝石は、コンプリート ストーンといって
奴らが、人材の枯渇だけでも回避させる為に
近年開発したものであるらしい。

この宝石を頭にはめ込むことで、
いかなる者でも、
文字通り、肉体が若返り、性格も戦士にふさわしい性格に
変わるという。

つまり、臆病者の老人だろうが、
大馬鹿者だろうが、この宝石を使えば、
連合軍の為に戦ってくれる若き戦士になれるのである。


クイックは、自分みたいな者でも、連合軍の為に
役立てることができるので、このコンプリート ストーンは
とても、ありがたい宝石だと言っていたが、
俺には、とても信じられなかった。

俺の気のせいかもしれないが、
催眠状態にかけていることで、
クイックの表情そのものは、感情はみられないのに、
そのことを語るクイックからは
悲痛な気配の様なものしか感じられなかったからだ。

「くっ、聞くべきではなかったな 
敵を過去のある人間として、認識してしまうのは、
この俺にとって、もっての外だというのに」
俺は、苦虫を噛み潰した表情になった。

俺にとって、英雄だろうが、悪人だろうが、
敵は敵である。 その敵に過去をみて、
怒りや憎しみを覚えるのならまだしも、
悲しみや敬意など決しておぼえたくはなかった。

その最大の理由としては、俺自身が
過去や悲しみを、物心ついた時より
まともに、見てもらえなかったのに、
敵が、それをみてもらえるのが、
気に食わなかったからなのだが、
当時の俺の自尊心は、そんなことは、絶対に認めなかっただろう。

「全く、敵に過去をみれば、最高顧問としての職務に差し障るわ!」
俺は、ロケトン達に、大声で言った。

「タタンガ様、コイツを処分しますか?」

「いや、コイツに、もう一回この宝石をはめ込んで、
議長達への奇襲作戦に利用するとしよう。
ロケトン1号に修理が完了次第、
自動操縦プログラムを発動するように
伝えてくれ」

決して軽視できないダメージだったが、
もともと80年代当時としては、
生産性も、ずば抜けて優れていた機体だった為、
パゴスの修理は思った以上に、はやく済んだ。

画像


クイックに、コンプリート ストーンをはめ込んで、
パゴスに乗り込ませ、俺とロケトン1号は、パゴスの
トランクルームに潜り込み、自動操縦で発進させる。

無論、宇宙催眠にかけた軍人達に
議長の屋敷がある惑星の近くにある
宇宙ゴミがあるエリアに集結する様に連絡もした。

他のロケトン達は、俺が過去に買い取った
専ら宇宙での輸送に使うタイプのコンテナ船に乗り込ませ
発進させた。

俺がクイックと共に、エリアから離れた事は
既に伝わっているのだろう。

議長の屋敷のある惑星にたどり着くまでに、
何度か、友軍、もはや俺には、敵軍といったほうがいいか
遭遇したが、クイックに
敵に予想外の反撃をうけたが、何とか敵を始末して、敵の機体を
奪って帰還した。 尚、戦士として、自分の機体を持ち帰らないのは
戦士の恥なので、機体はコンテナ船に載せてきたと言わせると

敵軍たちは、全く疑いもせずに、
コンテナ船のチェックすらもしないで信用した。
彼らは、予想外のことはあっても、
フォーム・アーミーの新鋭の戦士が
輸送・補給部隊の軟弱者出身の獅子身中の虫に
負けるはずなど決してないと
信じて疑わないのだろう。
(つまり、自分の国の軟弱者は信用できないが
他国の勇者は信用しているみたいで気分が悪かったが)


まるで、無人の荒野を駆け抜けるがごとく、
自分でも、びっくりするぐらい簡単に議長の屋敷にたどり着いた。
クイックに潜入でも使うカメラ内蔵のコンタクトレンズをつけさせてから
俺を倒したと連中に報告させた。

議長と彼のシンパは、まるで、今世紀最大の偉業でも達成でもした様に、
ハイテンションすぎなしないかと思えるぐらい喜んだ。
(もっとも、連合軍の上層部には、所詮他国のことなので、
彼らの喜ぶ様子に、いささか呆れている様子がみられたが)

この連中の喜びの深さが、
俺が、この連中にとって害になる様なことを
してきたことの深さなのだ。

もっとも、そんなことを思えるようになったのは、
後年のことである。

当時の俺は、この連中の喜ぶ様子に、ただムカついた。

俺は、クイックに、次はシンパを倒すことですが、
ここは、一旦英気を養うことと祝杯の意味をこめて、
首脳陣の方々だけでも酒でも飲みませんかと提案させてみた。

通常なら、軍人たる者
計画を迅速に遂行させることが、第一であり、
こんな提案など、
到底、受け入れられるはずもなかった。

案の定というべきか
連合軍の上層部は反対してきた。

だが、議長と彼のシンパは、
テンションが上がりすぎて、うかれていたので、
受け入られた。 しかも、クイックの部下達が
帰還するまでの間だけでも、同志として祝おうと
連合軍の上層部を酒宴に誘ったのである。

普通なら、こんな誘いにのる軍人などいない。
だが、奴らの計画の遂行の為に要する兵力のほとんどが
少数精鋭で、迅速に作戦を遂行する為なのだろう
その帰還できていないクイックの部下達なのである。

連合軍の上層部にとっても、一番厄介な敵も倒したということ
また、計画を遂行するには、部下達が帰還するのを
待たなければならない。

そんな思いが、連合軍の上層部に油断を生じさせたのだろう。
連合軍の上層部も酒宴に参加した。

俺は、クイックに、連合軍の上層部と議長達に
議長の別宅で酒宴の用意をさせることを提案させ、
俺の機体とコンテナ船を別宅から少し離れたところに置かせた。

俺とロケトン達は、用意した武器を持って、
別宅の宴会場の隣の部屋に忍び込んだ。

宴会場は、クイック、議長と彼のシンパ、
連合軍の上層部を除けば、
数名の護衛だけだった。

これなら、俺とロケトン達でも、十二分に勝てる。

とりあえず、俺は奴らの酒がすすむのを待った。

単純に、冷静に攻撃をしかけるタイミングを
待てばいいだけのはずだった。

しかし、奴らが、倒したと思っている俺への悪口で
盛り上がっていた。

何も知らないのに、おめでたい奴らだと思っていた。
しかし、そんな奴らをみている内に、

俺自身も、なぜかはわからないが、
ふと、唐突に俺は思ってしまった。

なぜ? 俺はこんなことをしているのだ?

それは、奴らが俺を排除しようしたからだ

俺は、自分の問いに自分で答えた。

なぜ? 奴らは、俺を排除しようしたのだ?

それは、俺の栄達を奴らは妬んだ、奴らは、俺を認めなかった
別に、俺は奴らを蹴落とす気も微塵もなかった。
ただ単に、俺は、自分が望むレールを
手にして認めてもらいたかっただけだったのに

そんな自問自答をしていると、
なぜかはわからないが、

今すぐにでも、攻撃をしかけたい気分が
湧き上がってきたが、何とか我慢した。

1時間もすれば、奴らは、すっかり酔っぱらっていた。

攻撃をしかけるタイミングがきた。
俺とロケトン達は、一斉に宴会場に乱入した。

すっかり酔っぱらっていた
そのうえ、倒したと思った奴が、乱入してきたのだから
完全に不意をつかれた奴らは、対処できなかった。

あまりにも、あっけなく奴らを捕まえることができた。
戦いは、俺の勝利におわった。

帰還しようとしていたクイックの部下達も、
俺が潜ませていた手勢で、撃退した。

早速、頭取の名前で、俺は戦後処理をした。
議長と彼のシンパは、反逆者として
大々的に報道させてから追放した。

連合軍に関しては、
コンプリート ストーンとやらを利用しようが
それが、即効で国力の回復につながるわけがないので、
戦う力など全くないに等しかった。

そこで、俺は、ほとんど一か八かの賭けで、
武装解除と彼らの戦闘の技術のデータの全てを
研究施設の最高顧問である俺に提供すること
その代わりに、彼らが支配しているエリアには
そのままにしておくことと
捕えた上層部とクイックを引き渡すことを条件に
講和することをもちかけてみた。

自分達の戦闘の技術の提供などしてくれるのかと
懸念を抱いてもいたが、彼らの国力の疲弊が、
この条件を願ってもないものにしていたのだろう。
あっさりと講和は成立した。

講和に関する協定についての調印の際、
(もっとも、彼らは、俺の提案した内容を呑むしかないので
協定というべきではなかったかもしれないが)
捕えた連合軍の上層部とクイックを引き渡した。

尚、クイックの引き渡しに関しては、コンプリート ストーンを
外して、引き渡した。 

その際のフォーム・アーミーの幹部たちの
不服そうな顔つきが、どうにも気に入らなかった。

こんな局面で、言うべきことではないことは、
頭ではわかっていたが、俺は言わずにはいられなかった。

「この方は、お前さん達の国を思うという美名のもとに
行われた無茶苦茶な要求にもこたえて、頑張ってくださったのだ。
くだらぬ考えをする暇があれば、この方をいたわってあげることですな」

クイックにかけた宇宙催眠は、調印後、ほどなくして解除した。

連合軍から提供された戦闘の技術、
とりわけ、可変の戦闘ロボの技術は、俺には、
十二分に、興味深いものだった。

ただ、あのコンプリート ストーンに関しては、
全く興味がわかなかった。
興味どころか、心情的に
全く好きになれなかった。

こんなものがあれば、青少年の心身を磨く
努力を怠らせるなどと、何の得にもならぬ
きれいごとを言うつもりはない。

こんなものがあれば、上手くは言えぬが、
社会の息苦しさと風通しの悪さを加速させ、
人々に、そのことに気づかせないだろう。
そんな気がしてならないからだ。

俺は、コンプリート ストーンのデータを
秘密のアジトにある地下の保管庫にしまった。
この保管庫は、生態認証形式になっているので、
俺以外の人間には開くことはできない。

俺は、可変型のロボットのデータを解析しようと思ったが、
相変わらず、研究施設、軍部、マスコミ、議員、民間企業との
いさかいは、おさまるどころか、加速した。

加速の原因は、議長達を追放したことだ。
彼らは、俺が策謀して議長達を追放したと思っているらしい。
俺が、いくら説いても、理解してくれなかった。

加速した分、いさかいに対処する時間が増えてしまった。

当時の俺は、全く自覚がなかったのだが、
それに対処する方法も、クイックとの戦い以降、変わっていた。

後年になって、思うのだが、あの戦いの勝利が
俺を良くも悪くも強くしていたらしい。

ほとんど、力と恐怖で、そのいさかいを無理やりねじ伏せていた。

月日が流れ、西暦1989年4月
俺は、研究施設の最高顧問と頭取代行を兼任していた。

頭取代行といってはいるが、
もはや、半ば平然と、
俺は、幾多の惑星の支配者であることを世に知らしめていた。

何の高揚感や達成感、嬉しさも、俺にはなかった。
このことは、単に俺に敵対する者達を黙らせる為に、したことだからだ。

敵対する者達を、力と恐怖でねじ伏せたので、
人々からは、俺は悪の帝王として認識されてしまっていた。

そんな俺に、まともに会話する者などいなかった。
もはや、俺には、ロケトン達と宇宙催眠にかけた連中しかいなかった。

当時の俺自身は、絶対認めなかっただろうが、
すなわち、俺は、どうしようもなく孤独で、俺の周囲には、
何の感情も存在しない状態だった。

そんな状態に、俺は、気づかぬうちに、まいっていたのだろうか
俺は、地球遠征計画を実行することにした。

画像


地球遠征計画は、もともと俺が発案したものではない。

俺が、宇宙催眠を習得しようとしていた頃、
新たな資源を求めて、自分達の宙域以外の
惑星も支配しようと軍が発案したものだった。

その計画の最初のターゲットが太陽系の地球という惑星、
つまり、マリオが住む惑星なのである。

色々と資源があって、科学力も、俺の故郷に比べて
全然たいしたことがないので、最初のターゲットに
もってこいだったのである。

俺が、コネクションを作る為に、頭取達を宇宙催眠に
かけたことで、計画そのものは、一旦停止していたが、

俺は、その計画を実行に移すことにした。
別に、俺自身は、新たな資源を求めていたわけではない。
自分の専用の新しい拠点を持ちたかっただけだった。

どの様に対処しようが、
敵対する者達に時間を割くことにうんざりしいていた。
俺は、俺の認めない奴らがいない場所を、欲していたのだ。

俺は、表向きは、先遣部隊の隊長として出陣した。
(先遣部隊といっても、俺の部下は、相変わらず
ロケトン達だけだったのだが)

「科学力は全くないらしいからな、
俺とロケトン達だけでも、いとも簡単に征服できるだろう。」

楽観していた俺は、露程も予想していなかった。
その地球で、俺にとって、最強かつ最大の敵と呼べる男に
出くわすことを


-(8)サラサ・ランドのデイジー姫へ続く-


※次回の『ルイージに歴史あり外伝 その13』の掲載は
2017年8月上旬ごろの予定になります。 何卒ご了承ください。

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