『週刊ヤングジャンプについて』(その2)

11月26日

(2)はいすくーる仁義〔中編〕

ある日、情二に教師になることを命じた早乙女が、
情二の授業を参観することになった。

教育関係者や生徒の親御さんではなく、極道の組長が参観にくるのである。
情二だけでなく、生徒もまともに教科書も読めないぐらい
完全に怯えきっていた。

そんな異色の授業参観で、早乙女は情二に問う

お前の授業には、何かが足らないと思わないのか?

情二は、生徒の学力の低さを指摘されているのかと思いきや
早乙女は、トラブルはないのかと問うたのである。

つまり、青春ドラマにある様なトラブルが
ないのかいう意味で問うたのである。

情二は、唖然としたが、答えた。

金八先生じゃないのですから
そんなトラブルが、頻繁にあるわけじゃないですか

確かに、情二は、金八先生の様に、週一回で何らかの学校の問題に
直面はしなかった。

しかし、教師になることを望む望まざるにかかわらず、
学校で自分の好きなようにしようがしまいにかかわらず、

教師である以上、学校の問題に、直面しないわけにはいかなかった。

情二は、その学校の問題に、曲がりなりにも対応していく。

その行動の動機は、
一目ぼれした白鳥先生への愛の為だった。
また、日頃の言動がひどい情二でも、
決して曲げることや捨てることもできない仁義があった。 


ある日、舎弟にしている生徒の一人である
アキラの母親が急な病かなにかで、
大きな病院に入院する必要があった。 
だが、病院のベッドの空きがなかった。

そのことで、うかつにひどいことを言ってしまった情二だったが、
アキラの様子をみて、結局は、アキラの為に、病院に掛け合うことにした。

はじめは、金で交渉しようかと思った情二だったが、
病院の医院長(だったかな?)は、金に困っていなかった。
しかも、極道をハッタリと暴力で偉そうにしているだけで
いざ、病気による苦痛等があれば、泣き出すだけだと馬鹿にしていた。

それが、情二の仁義に触れてしまったのだろう。
情二は、提案した。

『それならば、メスなど好きなものを使え 
もし、自分が、泣きの一言をもらさなければ、生徒の母親を
入院させろ』と

人間の痛点を知り尽くしている様な医者にしてみれば、そんなことは、
愚かなハッタリにしかすぎない。

どうせ、痛点の一つに注射をすれば、すぐに泣きだすと思っていた。

だが、情二は、耐え抜いた。 体中の痛点に、注射をされたが、
泣きの一言をもらさなかった。

アキラの母親を入院させる約束を取り付けた。

尚、情二は、自分の行動をアキラやその母親にもらすなと医院長に言った。
理由は、あしながおじさんの様なマネなどできるかということだったが、
(上手くは言えないが)恩着せがましい真似に、
映ってしまうのが嫌だったのかもしれない。

ある日、白鳥先生のクラスの一人の男子生徒が、登校拒否をはじめて、
自分の部屋からでなくなった。
(うろ覚えだが)理由としては、ブロイラーの様に、
大人や社会のひかされたレールを歩くのが嫌だったからだ。

白鳥先生が説得したが、登校拒否をしたままだった。

情二からすれば、他のクラスの生徒だが、
白鳥先生への愛の為に、
その男子生徒の説得にあたった。

力ずくで、学校に引きずり出してやろうと思っていたが、
とりあえずは、温和に話しかけようとした。

ただ、その男子生徒が、馬鹿だの、タコだのと言ってきたので、
頭にきた情二は、ドアを蹴破った。
そのことに男子生徒も、怒って、エレキギターで、情二を殴った。 

しかし、武闘派である情二である。
さらに、エレキギターで殴りかかってきた男子生徒に、
パンチをくらわせた後、男子生徒に容赦なく往復ビンタをくらわせた。

その様子に生徒の母親が完全に怯えてしまっていたので、
さすがに、まずいと思ったのか、話して説得することにした。

説得するといっても、四の五の言うつもりはなかった。

とりあえずは、学校に登校するだけでいいと言ったが、
男子生徒は、理屈をいって、首を縦にふらなかった。

そんな男子生徒の理屈に対して、情二は、手短に言った。

お前の理屈などどうでもいい。 問題はお前が学校に来ないと、
ある人が暗い 自分は、その人を暗い顔をみたくないだけだ

男子生徒が帰れと言っても、情二は、居座り続けた。

しびれをきらした男子生徒は、ある問いに答えられるのなら、
登校してやると言った。

その問いは、『人は何のために生きるのか?』だった。

男子生徒は、多くの先人達でも、答えられなかった問いを
情二の様な極道に答えられるわけがないと思っていた。

だが、情二は、その問いに、いとも簡単に答えた。

そんなもの、ハッピーになる為だ


相手が、あまりにも簡単に、答えたので、
男子生徒は、落下する様な衝撃をうけた。

戸惑った男子生徒は、さらに情二に問う

人がハッピーになるなら、何をしてもいいのか

そんな問いにも、情二は、あっさりと答えた。

別に、銀行を襲撃しようが、何もしてもいい

あっさりと答えた後、情二は、付け加えた。

罪を作れば、警察に追われる 世間様からも
後ろ指をさされる。 そのことを考えないと、人は
ハッピーになれない。 質問の答えになったか

男子生徒は、答えになってないと言ったが、
うけた衝撃は、大きかった。

そのことが、うちとけるきっかけになったのか。
男子生徒が好きなミュージシャンの曲を聞きながら、

男子生徒が情二に問う。

先生にとって、ハッピーに思えることは?

情二は、その問いに正直にこたえた。

自分には、心から好いている女子がいる。
その人と、深い関係になって、一緒に朝のコーヒーでも
飲めれば、ハッピーだと

情二の答えに、男子生徒は、わらいながら問う。

もし、学校をやめることがハッピーにつながるなら

そんな問いにも、情二は、はっきりと答えた。

自分のしてきたことは、無駄足になるが、
それならば、学校をやめてやれ

およそ、教師の答えではなかったが、
男子生徒に、自分が何のために、生きるのかと
その答えをみつけさせたのかもしれない。

その後、男子生徒は学校に通うようになった。

ある日、情二の学校に、生活指導の先生が赴任してきた。
その先生の目的は、
生徒達を徹底的に厳しく管理しようとすることだった。

もう少し具体的に言うと、
例えば、校則でパーマを禁止にしても、パーマをしている者の中には、
天然パーマの者もいる。

だが、そんなことは、生徒の嘘だと決めつけて、パーマしている者は、
誰であれ、校則で定めている髪型にさせるのである。

その先生の徹底した厳しい管理により、
生徒達を例外なく、学校のルールに従わせたのだから、

学校の教師達は、授業、クラスの担任の業務等、
教師としての仕事は、この上なくスムーズになった。

しかし、情二は、不服だった。 
生徒達の顔から笑顔が消えた。

しかも、舎弟である生徒達すらも、
自分に壁を作って他人行儀になった。

そんな生徒達の様子に、徹底した管理により、
例え教師が、仕事をしやすくても、
やはり、生徒達が楽しく学校に通えなくては、
何の意味がない。 

生徒の中には、
喧嘩を売ってくる様な問題児が大勢いるが、
教師としての自分も
そんな生徒達の笑顔がある学校が楽しかったのだ。

つまり、学校が楽しいか楽しくないかが
生徒にも教師にも大事であると

情二は、その生活指導の先生を呼び出して、しばき倒した。

赴任当初は、先生になりたくてなったわけじゃないから
好きなようにやってやると言っていた男の行動とは
思えなかったが、曲がりなりにも教師として、
着実に成長して、自分の教師としての信念
つまり、はいすくーる仁義を
築き上げてきたということなのかもしれない。

"『週刊ヤングジャンプについて』(その2)" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント